The less volatile market, the easier life!

資産クラス毎の値動き分析、各種株価指数イベントの考察、アノマリーの検証、225オプションのリスク管理備忘録です。日本株&デリバティブの運用と金融翻訳で生計立てています。

モメンタム効果の一考察

日本人は逆張りを好み、外人は順張りを好むと言われるが本当か?

図1は、 東証1部、マザーズそしてJASDAQの各市場について、指数の週次リターンと翌週の投資部門別の現物差引売買金額に有意な相関が見られるかを2014年以降直近までで調べた結果である。プラス(マイナス)の週次リターンの翌週に買越(売越)なら順張り傾向、逆にプラス(マイナス)の週次リターンの翌週に売越(買越)なら逆張り傾向ということになる。

1%水準の有意な相関が確認できたのは、東証1部における国内投資主体の逆張り、海外投資家の順張り、そして、新興市場における個人の順張りであった。確かに、東証1部に関しては巷で言われる通りの結果が確認できたが、新興市場では個人の順張りというやや意外な結果が示された。

行動ファイナンス理論では、こうした投資行動の違いを自己責任バイアスの大きさで説明する試みがなされている。更に、自己責任バイアスが大きいことが順張りの投資効果であるモメンタムの原因になるという主張が行われている。

思い通りの結果を自身の能力のせいにする自己高揚的バイアスと悪い結果は運のせいにする自己防衛的バイアスが大きいのが欧米人で、小さいのが日本人というこのようである。そして、欧米人が持つ成功時には急速に自信を深め、失敗時でも修正は徐々にしか行わないという性向がモメンタム効果に結び付くということらしい。

となると、新興市場個人投資家は海外投資家に似たマインドセットを持っているために順張りになるといことなのか。新興市場でアクティブに振舞う個人投資家東証1部を主戦場とする個人投資家に比べてよりrisk loverであろうことは容易に想像できるが、リスク選好が順張りに直結しているとも思えない。

直観的には、以下に記した新興市場に特有の要因が順張り(モメンタム)を強化する方向に働いていると捉えるほうがしっくり来る。

  • 上げても空売りできる銘柄が限られることで買い主導となり、下げてもショートカバーが入りにくく、逆張りを促すエネルギーに欠ける、
  • 浮動株比率の低い小型株メインの市場であるため、流動性の影響を大きく受け、売り買い共に一辺倒になりやすい、
  • 元々のバリュエーションが高い=期待値が高いため、極端な理想買いと失望売りといった動きに拍車がかかりやすい。

金融資産の構成比を見る限り、日本人は依然としてrisk averseだが、足元ではコロナの影響もあってロビンフッダーに代表されるリスク選好の市場参加者が増えており、将来的には金融リテラシーの高まりと共に東証1部においても日本人が順張り志向に転換していくことも大いに考えられる。

最後に、順張りの投資効果としてのモメンタム戦略は儲かるのか確認する。週末リバランス前提で上げていれば翌週long、下げていれば翌週shortを続けた場合の2014年以降の市場別累積リターンを図2に示す。JASDAQがモメンタム戦略に最適な市場と言えることが確認できた。当然ながら、日本市場ではなく米国市場、現物市場ではなく先物市場、週次以外の期間リターンなど前提を変えれば景色も変わり得ると考える。

f:id:onemonth85putseller:20200715123027p:plain
f:id:onemonth85putseller:20200717053253p:plain
図1                                                                                                                                                                                図2

 

                                                                                                                                               

本内容にある見積、予測、予想に関する情報が正しいとは限りません。また、本内容は特定の銘柄、取引を推奨するものではありません。取引に当たっては、ご自身のご判断でお願いします。売買で被られた損失に対し、著者は何らの責任も持ちません。