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資産クラス毎の値動き分析、各種株価指数イベントの考察、アノマリーの検証、225オプションのリスク管理備忘録です。日本株&デリバティブの運用と金融翻訳で生計立てています。

リターン二極化の満ち引き考察

2020年のBest Performerはグロース株

2020年の主要国株価指数の年間リターンは、グロース株ウェイトの高い指数の圧勝であった。上昇率第1位は、+40%超の米ナスダック指数。資産クラスを抜きにすれば、+300%のビットコインがダントツの1位なのだが。

バリュー株ウェイトが高い日本株は、東証1部が+5%、ジャスダック東証2部はそれぞれ-3%、-10%と、必然的に米国株に劣後した。それでもグロース株の相対的ウェイトが高いマザーズが+30%超、日経225が+16%と健闘。序盤からコロナ危機に見舞われた事実を思えば、望外のリターンであった。

金利消失&過剰流動性とコロナ禍のよる巣ごもり需要拡大

コロナ感染拡大を受けて、主要国の中銀及び政府は金融・財政両面で素早い対応を見せ、潤沢な流動性供給によって市場参加者に大きな安心をもたらした。また、金利消失によって株式等のリスク資産に資金がシフトし、いわゆる「株式の債券化」が進展した。一方、コロナ禍は人々の行動様式の変容を強いて、巣もごり需要の拡大をもたらした。こうした状況から最大の恩恵を受けたのが、GAFAMに代表される大型グロース株であった。

理論株価=利益 / (金利 + リスクプレミアム)

利益割引モデルによれば、理論株価は、将来利益の割引現在価値の総和である。グロース株に当てはめれば、巣ごもり需要拡大が利益を押し上げ(分子↑)、金利消失とコロナ感染拡大の長期化による持続的成長期待が金利及びリスクプレミアムを下げ(分母↓)、株価は大きく押し上げられた。こうしたグロース株のウェイトの高い米ナスダック指数が最高リターンを稼ぎ出したのは当然の帰結であった。

リターンの二極化拡大

2020年は、グロース株がプラス寄与し、バリュー株がマイナス寄与したため、リターンの二極化が拡大した。下図は、2020年の東証33業種と市場別指数の年間リターンだが、上位にはハイテクやITサービス関連等のグロース系、下位にはバリュー系がずらりと並び、バリュー株中心の投資歴の長い人にとっては「マザーズや日経225等の指数は上げてるのに、個別銘柄はさっぱり」な厳しい年であったと思われる。リターンの二極化拡大が高まる時には、業種や銘柄選択の巧拙が運用成果を大きく左右する。

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センチメント指標の"Dispersion"で、過去のリターンの二極化傾向も確認する。"Dispersion"は、指数を構成する業種や銘柄のリターンのクロスセクション標準偏差で定義され、どの業種や銘柄も同水準のリターンを示せば低下、二極化すると上昇となる。 

下図は、2005年以降の東証33業種別指数の月次リターンで見た"Dispersion"(6か月移動平均)の推移。市場危機時に"Dispersion"拡大は付き物である。2008~2009年のリーマンショックや2012~2013年の欧州債務危機バーナンキショック等の市場危機時には2年程の”Dispersion"拡大期間が確認できる。2020年のコロナショックでも一定の上昇が確認できるが、そこまで高水準ではない。

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過去の金融由来の市場危機は信用収縮を受けた景気後退に対して金融・財政サポートも小出しになり、回復に時間を要するため、"Dispersion"の拡大も長期化すると考えられる。一方で、今回のコロナショックは、ロックダウンで瞬時に需要が蒸発し、実体経済は大打撃を受けたが、そこがボトムと認識されて、市場は早期に回復を示した。こうした危機の特徴のを踏まえれば、今回の二極化拡大は長続きしないと考える。

2021年はグロースとバリューどちらが優位か?

下図は、ラッセル野村のスタイル&規模別の相対指数(2004年末=100)の推移である。"Dispersion"とスタイル&規模別の相対指数の動きの間に、有意な相関は確認できず、"Dispersion"の上下で、Growth/Value、Large/Smallいずれを選好すべきか判断するは難しい。今年は、バイデン・トレードの深掘りでバリュー株選好が継続中だが、パンデミック終息が見えてくるまでは、グロースも粘り腰を見せると見込まれる。しかし、年前半中にパンデミック終息が見えてくるようであれば。グロースからバリューへのリバーサルが一気に進展するとも思えるが。

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