エヌビディア後米雇用統計
米経済指標が総じて底堅さを示す中、週前半の米株はNVDA決算に対する様子見で推移し、決算発表後は期待の高さとBlackwellへの懐疑的見方から下落するも変動幅自体は限定的であった。こうした流れはVIX指数の期間構造で確認でき、NVDA決算発表日の8/28のVIX1D指数は急伸した後翌日は出尽くしから急落となっている。VIX1D指数の算出が始まった2023年4月以降で常に観察されるNVDA決算に絡んだ恒例の動きである(下図参照)。

Magnificent7の決算発表が出揃ったことで、今後の焦点はマクロに移る。9/6(金)には8月初旬の大幅下落のきっかけとなった米雇用統計の発表が控える。8月初旬以降の株価回復は、米経済指標に底堅さが目立ったことで米景気後退懸念が後退し、リスクオン・センチメント回復となったことが大きい(下表参照)。

今回の雇用統計で前回7月の下振れの主要因であったハリケーンによる一時的要因が剥落することで雇用者数の回復と失業率の低下が確認できれば、目先はインフレの低位安定と併せたソフトランディング期待主導でのゴルディロックス相場が見込まれる。一方で、雇用統計に改善が見られない場合、失業率の「サーム・ルール」抵触や米国債10-2スプレッドがプラス転換目前であること(下図参照)を考慮すると、米景気後退の現実味が増して、荒れ模様の相場に逆戻りとなるため、今回の雇用統計は年内相場の基調判断の試金石となる。

本内容にある過去データ及び将来の見積、予測、予想に関する情報が正しいとは限りません。また、本内容は特定の銘柄、取引を推奨するものではありません。取引に当たっては、ご自身のご判断でお願いします。売買で被られた損失に対し、著者は何らの責任も持ちません。
円高耐性を高める日経225とIV割高感残る日経225オプション
ドル円下向きトレンド継続での日経225円高耐性は市場の落ち着きを示唆?
先週は、失業保険申請件数や新築及び中古住宅販売等米経済指標は底堅さが目立つ内容であった一方、雇用ベンチマーク年次改定や植田総裁の国会閉会中審査での証言及びジャクソンホール会議でのパウエル議長講演等注目イベントは前者が警戒していた程悪くはなかったが大幅下方改定となり、後2者は日本の利上げ路線再確認と米国の利下げ路線明確化となった。
結果的に、上述の注目イベントの結果が円高への力学を加速し、ドル円は週初の147円半ばから週末には144円前半へ下落した。因みに、先週ネットロングに転換したIMM円先物投機筋ポジションは8/19時点の最新データではネットロング微増となっている。

しかしながら、日経225は円高の重しをある程度跳ね返す耐性を見せた。強含みの日経225と弱含みのドル円がワニの口を形成し始めている。

下図は、日経225とドル円レートの直近20日散布図。先週は市場混乱直後の8月上旬と異なり、日経225は円高局面でも回帰線の上方で推移している。こうした動きが市場混乱の鎮静化に伴う一時的なものになるのかどうかは、引き続き日本の利上げと米国の利下げのタイミングとペースを巡る見方次第になる。いずれにしても、日米で互いに逆向きの政策軌道がこれ程明確化した2024年の金融市場の動きは予想が難しい。

来週は8/28にエヌビディア決算が控えている。Blackwellの出荷遅れ観測が警戒される一方でヘッジファンド勢は既に大型ハイテク株のポジションを大幅に縮小していることから決算へのハードルは下がっているとの見方も聞かれる。いずれにしても期待と不安混在の中で大きく株価を戻してきた同社の決算が目先の基調的な相場地合いを決定することになる。マクロ的には、9/18FOMCと9/20日銀金融政策決定会合まで残り1か月弱となる中、最大注目の9/6米雇用統計が失望を誘うようなら8月ショック再来ともなる。
日経225オプションの期近IVは高止まり感残る
8/5に70越えした日経VIも約3週間で25前半まで低下したが、平常時と比べるとまだ高い水準にいる。尤も、コロナショック時との比較では、急速な平均回帰への動きとなっているが。

期近限月(満期まで4週間と3週間の2時点)に関して、売建時の必要証拠金を足元とボラティリティが凪状態であった1か月前と比較。足元ではデルタが皆無でベガしかないプレミアムが5円にも満たないような40%Putにさえ20万円の証拠金がかかる状況。

Deep-OTMのPutのIVは平常時と比べて依然として10ポイント以上高い。期近オプション価格で見ると、足元の50%Putは平常時の80%Putに見合う。

本内容にある過去データ及び将来の見積、予測、予想に関する情報が正しいとは限りません。また、本内容は特定の銘柄、取引を推奨するものではありません。取引に当たっては、ご自身のご判断でお願いします。売買で被られた損失に対し、著者は何らの責任も持ちません。
日本発パーフェクトストーム襲来
株下げ加速は円高との共振による負のスパイラル
先週の8/1(木)、8/2(金)と大幅続落した後、週初8/5(月)にはブラックマンデー越えの4,451円安を記録して一時31k割れとなった日経225は翌8/6(火)には34kへ大幅反発して教科書通りの"Turnaround Tuesday"となった訳だが、その後は35kを挟んでドル円の動きに連動した膠着状態が続いている。今週は、リアルタイム価格更新遅延やサーキットブレーカー発動に加えて指数関連商品のミスプライス多発が見受けられる等、大きな混乱と動揺に包まれたパーフェクトストーム週間であった。
日経225は、週間ベースで4週連続下落、月初来でも2桁を超える下落率となっている一方で、S&P500は今週はわずかな下げにとどまり、月初来でも1桁前半の下落率で済んでおり、日米間で顕著なリターン格差が見られる(下表参照)。日本主導の動きであることは株価下落の深さと後述するボラティリティ上昇の高さの両面が物語っている。

NISA人御用達の一つである円建S&P500は7/10の直近高値から8/5迄で約18%の下落となっているが、下落寄与の内訳はドル安分10%に対してS&P500下落分8%であり、円ヘッジ無しのリスクがまざまざと浮かび上がった。ヘッジは、コストを短期の日米金利差である4~5%と見ても十分にペイする形となった。ここまで下げたにもかかわらず、8/9迄の年初来リターンは17%弱となっているが。逆に、ドル建TOPIXは同期間で約13%下落しているが、下落寄与の内訳は生TOPIX下落分23%に対して円高分-10%であり、外人から見た日本株投資の妙味は高まっているとも言える(下図参照)。
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今回の世界同時株安は日本発のものであり、その端緒は7/31の日銀政策決定会合後の植田総裁の記者会見である。既に、前夜の段階で「日銀が利上げ検討」とのリーク報道があったこともあり、当日の利上げ決定後の日経225は材料出尽くしから上昇して引けたが、夕方の記者会見で植田総裁が積極的な利上げ継続の可能性を示唆したことからセンチメントが急悪化した。この「植田ショック」から、円キャリーの巻き戻しが一気に進み、円が急騰する一方で株を含む様々なリスク資産は大きく下げることとなった。2013年5月に当時のFRBバーナンキ議長がテーパリングの可能性示唆をしたことで大きな下げに見舞われたバーナンキショックと似た構図である。
そして、悪材料はその後も続いた。日銀と同日開催の米FOMCではパウエル議長が9月利下げに言及したことを受けて米株は上昇したが、8/1の失業保険申請件数大幅上振れとISM製造業指数の大幅下振れに続き、8/2には失業率が大幅な悪化を示して「サーム・ルール」に抵触したたことから米国の景気後退懸念が俄かに高まり、株売り/債券買いのリスクオフの流れに一気に傾いた。米金利の急低下に連れて、円高・株安の共振が続いた(下図参照)。


円キャリー巻き戻しの行方
円先物IMM投機筋のネット・ショートは、直近ピーク7/2時点の18万枚強から最新8/6時点の1万枚強まで急低下している(下図参照)。市場では円キャリーの巻き戻し一巡との観測が聞かれるが、今回のネット・ショートが積み上がり始めた2023年1月のドル円は130円レベルである点を考慮すると円の上昇余地はまだあると考えられなくもない。

ドル円レートは長期的には日本のベースマネーを米国のベースマネーで除した値に収束するとの理論に立てば、現状のドル円レートの理論値は120円前後と見積もられる。今後の金融政策が、日本の利上げ&テーパリングに対し米国は利下げ&量的引締解除と逆方向の政策軌道が見込まれることを踏まえれば、理論値は更に円高方向にシフトする。
今後、円高方向の動きが後退するためには、日本の景気とインフレが減速して追加利上げの可能性が明確に遠のき、加えて米国ではトランプとハリスいずれが新大統領になっても政府支出増加が見込まれるため、インフレリスク再燃から利下げ打ち止めから反転利上げ警戒色が出てくるシナリオだろうか。
日経VIXショックのインパクトの大きさ
日経VIは8/2の29.44から8/5に70.69へ急騰した。これまで2015年以降の上位10傑は全て2020年3月のコロナショック時のものであったが、今回はそれを大きく更新した(下図参照)。東日本大震災やコロナといった災害起因ならあり得るとは思ったが、マクロ要因だけでこれ程のボラティリティ急騰を見ることになるとは想像できなかった。ボラティリティ急騰後にいつもながら思うのは、ベガ・ショート筋の阿鼻叫喚とベガ・ロング筋の恍惚咆哮が織りなすゼロサム際立つ刹那的取引である。

水準自体もさることながら単日ベースの変化率も2018年2月のVIXショック時の米VIX指数が記録した115.6%(2/2の17.31から2/5の37.32)を大きく上回る140.1%となるなど、センチメントの急悪化ぶりが浮き彫りとなった。VIXショック、コロナショック、そして今回といずれも週初月曜にピーク値を付けており、週跨ぎのテールリスクも改めて認識された。
8/5の70.69から翌8/6には51.19に急低下した日経VIだが、その後は45前後で足踏みが続いている。週末8/9には前場で40割れ推移となっていたが、後場から戻して45.28となっている。日本株のセンチメントは依然脆弱である。暴落要因が異なるため、コロナショック時との単純比較はできないが、相場の下落上昇ペースと同様に、ボラティリティも上昇はあっという間で下落は緩慢と考えられる。特に極度に大きく急騰した場合にはその可能性が一層高まると思われる(下図参照)。

一方で、米VIX指数は8/5の38.57から週末8/9には20.37まで低下しており、節目の20は目前である。また、スケールの関係で見えずらいが、期間構造もコンタンゴ状態に戻っており、センチメントの回復ペースは米国が早い(下図参照)。


2018年2月のVIXショック時には、リスク・パリティ戦略ファンド主導で株式エクスポージャーの一斉縮小が行われた訳だが、当時東証上場の「NEXT NOTES S&P500 VIXインバースETN」も2/6に一夜にして96%下落し、早期償還条項発動で大きなダメージを食らった投資家も多かったはずである。今回もこうしたリスク・パリティ戦略ファンドの売りが警戒されているが、米VIX指数は今回8/2の23.39から8/5の38.57へ64.9%上昇で済んでおり、2018年2月程の上昇率は示していない。
本内容にある過去データ及び将来の見積、予測、予想に関する情報が正しいとは限りません。また、本内容は特定の銘柄、取引を推奨するものではありません。取引に当たっては、ご自身のご判断でお願いします。売買で被られた損失に対し、著者は何らの責任も持ちません。
備忘録: 2024/8/2 日経VI爆上げでVaR破壊神降臨
下げは続く?
日経225は7/11に42,224の高値を付けて以降8/2迄の15日で上昇日が4日しかない一方で2%超の下落日が5日もある中で8/2には35,910まで下落し、この間の下落率は15%に達している。因みに、8/2単日の下落率5.8%は2015年以降では2020/3/13(SQ日)コロナショック時の2020/3/13SQ日の6.1%に次いで高い。下落幅で見ても1,000円以上の下げが3日もあった。
8/2ナイトセッションでは、米7月雇用統計の予想を上回る悪化を受けて市場は俄かにリセッション確信を高め、米株安と円高進行から日経先物9月限は一時34,350まで下落した。高値からの下落率が20%に接近し、弱気相場入りも見えてきた。つい先週までは、米景気の堅調ぶりから、"Bad news is good news"的な反応を見せていた市場も、今は"Bad news is bad news"に転じてしまった。
結局、日経225もドル円も年初からの上昇分の殆どを吐き出す形となった(下表参照)。今回は上げ下げ共にあっという間の出来事であった。

想定のずれが招いた株安円高
元々、2023年は米景気&インフレが緩やかに減速してFRBがハト派姿勢に転じて適度な利下げが行われるとの見方が多かった一方で、日本では2022年12月にYCCでの長期金利変動許容幅拡大で金融政策の正常化へ向けた地ならしが始まり、2023年は日銀がタカ派姿勢に徐々に転じてとの見方が多かったはずである。
ところが、米国では景気の粘り腰や一時的なインフレ上振れもあって政策金利は"Higher for longer"を強いられた一方で、日本では日銀が拙速な金融正常化を忌避する姿勢が市場に浸透した。これにより、米金利高の長期化と円金利の安定が温存することになり、2024年に入っても米株は大型ハイテク株選好にAI熱狂が加わり"Magnificent7"主導の株高が継続し、為替はドル高円安が持続的に進行することとなった。日本株は円安に歩調を合わせて一気にバブル高値更新となった。
相場にまつわる事は何事も結果論ではあるが、日米金融政策の方向性乖離、即ち米利下げと日本利上げが想定通り昨年から緩やかなペースでスタートしていれば、ここまでの大幅続落にはなっていなかったと思われる。日米共にAI宴が続き、株価の最高値更新が繰り返された分、ようやくに米利下げと日本利上げへの確信が高まった今、株価下落の深度は高まることになってしまった。
VaRインパクト
こうした中、日経VIは8/1の21.82から8/2の29.44へ急上昇した(下図参照)。コロナショック時の60越えに比べればまだまだと思うが、日経225オプションでは証拠金計算方式が昨年秋にSPANからVaRに変わったことで、甚大な影響が出ている。

元々、VaRはFatTail標準装備の厳格リスク量算定を行うように設計されている。昨年秋の日経VIが20前後の状況で、1か月物の80%Put売り建ての必要証拠金はそれまでのSPANに比べてVaRでは体感的に2倍になった印象がある。
加えて、日経VIが30近くへ上昇して必要証拠金がどれだけ増えたかを示したのが下3図である。VaR変更後以降のサンプルをもとに、満期まで42日(=6週間)時点の70%Put、80%Put、90%Putの必要証拠金を縦軸に、該当日の日経VIを横軸に取った散布図として示している。今年は年初からの急ピッチの上昇に合わせてCall主導で日経VIが上昇した場面も見られたが、概ね日経VIが20前後の時と比べて、70%Putは3~4倍、80%Putは2.5倍、90%Putは2倍に跳ね上がっている。デルタ0.2の90%Putの必要証拠金はラージ先物0.6枚のそれにほぼ見合いというレベルである。

直近1週間の9月限日経225オプションのIV Smile Curve、Put/Callレシオ(建玉残ベースと出来高ベース)、建玉残と出来高の変化を示したのが下3図である。8/2には9月限Putの建玉残が7/31の8.5万枚から6.5万枚に2万枚減った一方で、同Callの建玉残は5.3万枚から7.7万枚へ2.4万枚増えている(行使価格下3桁125,375,625,875を除く)。Putは主に売り方の損切りと買い方の利食いで建玉残が大幅減少し、建玉残ベースのPut/Callレシオは急低下した。これだけ必要証拠金が急上昇するとマージンコールの可能性が高まり、Put売り方は追いつめられる。



目先の相場想定
目先1か月の予定を見回しても、相場落ち着きのきっかけとなりそうなイベントは見込みづらいと言える。明日8/5は米ISM非製造業指数の発表が予定されており、50越え回復が予想されているが、製造業指数を見る限り、下振れリスクも一定程度ある。更に同日にはイランによるイスラエルへの報復が行われるとの報道もある。8/7と8/8にはソフトバンクと東京エレクトロンの決算発表が控えるが、センチメントが弱い分、見た目の数字が良くてもAIプレミアム剥落の売り反応も考えられる。米株は7月中旬にヘッジファンド勢主導で大型ハイテク売り/中小型バリューのローテーションが見られたが、ヘッジファンドの宴仕舞いの上手さにはいつもながら感心させられる。
8/14には米CPIの発表があるが、市場の関心がインフレから景気に移った今ではインフレ減速は金利低下からの円高要因にしかならず、日本株にとっての支援材料にはなりえない。8/22にはジャクソンホール会議が始まるが、FRBパウエル議長が市場の早期大幅利下げ催促に迎合するような姿勢を示せば、利下げ後追いから景気後退の根深さを認めることになって株下落に拍車がかかる可能性もある。そして、8/28にはエヌビディアの決算発表が予定されているが、8/3(土)のBloomberg報道によると、同社の次期AI半導体"Blackwell"の出荷が3か月以上遅れるとの話が伝わっており、暗雲立ち込める状況となっている。
7/22~7/26の日本株主体別売買動向では、外人が現物と先物合わせて約1.5兆円売り越しているのに対して、個人は約0.8兆円の逆張り買い越しとなっている。需給的には、信用残と裁定残共に史上最高水準にとどまる中で、やはり投げ売りが出てこないと下げ止まり感も出てこないであろう。「米株がくしゃみをすると、日本株は肺炎になる」と言われるが、それに加えて日米金利差縮小による円高が下げブースターとなりそうである。尤も、絶好の買い時だった言える日がいつかは来るのだろうけど。そして、ボラティリティもやがて平均回帰して行くのだろうけど。
本内容にある過去データ及び将来の見積、予測、予想に関する情報が正しいとは限りません。また、本内容は特定の銘柄、取引を推奨するものではありません。取引に当たっては、ご自身のご判断でお願いします。売買で被られた損失に対し、著者は何らの責任も持ちません。
備忘録: マクロン大統領の仏ヤケクソ解散総選挙を控えて
6/9(日)に仏マクロン大統領が欧州議会選での大敗を受けて下院解散を発表して以降、特に欧州金融市場の動揺が続いている。6/10(月)からの1週間で、仏CAC40指数は約6%下落し、Stoxx50ボラティリティ・インデックスは14ポイントから20ポイント近くへ急騰し、仏独10年物国債の利回り格差は50bpsから80bps近くまで約30bps拡大した。先週は極右ルペン氏がマクロン大統領との協力姿勢を示したことから警戒が後退し、株・債券共にやや戻しとなったが、今週は選挙直前週の思惑から株・債券共に再度売り込まれる流れとなり、安値を更新して終えている(下3図、上から株、国債、株ボラティリティの5/31以降の推移)。
この間、米株は仏株に大きく連れ安することはなかったが、先週末にかけて安全資産逃避の流れから米国債利回りは低下した。日本株は6/17(月)に大きく下げ、市況解説では仏政治危機の影響も要因の一つとされた。



弱気扇動筋によると、極右政権誕生ともなれば、仏のEU離脱のみならずNATO脱退や、果てはナチス台頭時を想起させるといったトンデモ話も聞かれる。金融市場が最も懸念しているのは、思想信条の右左関係なく、政権交代によって現状でEU許容基準を超えている財政赤字が一層拡大して、欧州債務危機の再来につながることである。似た状況として記憶に新しいのは、2022年9月の英トラスショック(トラス政権の光熱費家計支援や大規模減税の大盤振る舞い発表に、BOEの50bps利上げと保有国債売却開始発表と債務管理庁の国債発行の大幅増額発表が重なり、米国の利上げ行き過ぎと経済のオーバーキル懸念から大きく動揺していた市場に債券自警団が止めの鉄槌を下したやつである。Bloombergの記事によれば、足元で仏株・仏国債共にトレーダーのヘッジポジションはパンパンに膨らんでいるらしい。
仏下院議員選挙は2回投票制で、1回目で過半数票を得た候補者がいない場合に2回目の決戦投票が1週間後に行われる。この決選投票は必ずしも上位2候補で争われる訳ではなく、1回目の投票で12.5%以上の表を得た候補者全てが進めるため、余計に結果が読みづらくなる。選挙は極右・中道・左派の三つ巴ではあるが、極右優勢は直近の世論調査で明らかであり、ポイントは極右が過半数議席を取れるかだが、こちらは厳しいだろうというのがコンセンサスとなっている。その場合、マクロン氏率いる与党連合が少数与党として政権を引き続き担う可能性も出てくる。
こうしたことから、1回目で極右が過半数の議席を取ることが確実にならない限り、来週末の決戦投票まで日本の株式市場の反応も消化不良にならざるを得ないと思われる。今週、日経225は根拠不明確のまま2.6%上昇したが(配当再投資や外人買いからのショートスクイーズとも言われているが)、対岸の火事故に我関せずとしてこのまま捨て置くことが最適解なのかどうかは来週末の決選投票の結果次第となる。
悲しいかな、世界の週末イベントの結果を真っ先に織り込まねばならない宿命にあるのが日本市場である。例年7月上旬はETF換金売りから需給悪が懸念されるタイミングであるため弱り目に祟り目とならなければいいのだが。
本内容にある過去データ及び将来の見積、予測、予想に関する情報が正しいとは限りません。また、本内容は特定の銘柄、取引を推奨するものではありません。取引に当たっては、ご自身のご判断でお願いします。売買で被られた損失に対し、著者は何らの責任も持ちません。
日経225Weekly 2024/5/17 : NYDOW終値40,000越え、ボラティリティ一層低下、貴金属&卑金属コモディティ価格上昇
米4月コアCPIが半年振りの前月比鈍化確認で早期利下げ期待復活から、ダウが終値で40,000越えする等米主要株式指数は最高値更新した。CPI鈍化の一方で景気指標は概ね景気減速を示唆する結果となり、米国債利回りは総じて低下基調を辿り、BEI低下が限定的な中で実質利回りの低下が目立った。FRB高官発言は異口同音に政策金利の"Higher for longer"を強調する内容であったが、相場への影響は限られた印象。こうした流れから、ボラティリティは株&債券共に大きく低下し、VIX指数は12割れの年初来最低水準更新、MOVE指数も年初来最低水準に接近した。米ドルが軟調な動きとなる中で先進国&新興国通過共に強含みとなった。コモディティでは、中国の景気回復期待と週末の政府による大規模な財政・金融両面での不動産市場テコ入れ策発表が好感され、銅が5ドル越えの動きとなった。他にも、金の2,400ドル越え、銀の30ドル越え、白金の年初来高値更新等メタル系の動きが強かった。

ボラティリティ低下継続
米株&米国債共にボラティリティは最低水準に↓。来週は最大注目の22日エヌビディア決算直前に多少持ち上がる可能性はあるが、波乱なく通過すれば低位持続となりそう。

VIX期間構造もContango急拡大↓。

日経VIも連れ安↓。

メタル系コモディティの動意
地政学リスクの燻りが残る中で利下げ期待復活となる中、金&銀は上昇基調継続。銅は前述の通り、中国要因から上昇。また、プラチナは今年に入って広がったEV懐疑論をきっかけに非EV車向け浄化装置需要期待から強含みであったが、バイデン政権による中国製EV向け関税の大幅引き上げ予定を受けての米中EV戦争の激化想定からの上昇基調継続となっている↓。

本内容にある過去データ及び将来の見積、予測、予想に関する情報が正しいとは限りません。また、本内容は特定の銘柄、取引を推奨するものではありません。取引に当たっては、ご自身のご判断でお願いします。売買で被られた損失に対し、著者は何らの責任も持ちません。
日経225Weekly 2024/5/10 : 相次ぐFRB高官のタカ派発言とスタグフレーション警戒
今週は、米主要企業の決算発表が一巡し、地政学リスクもやや沈静化し、重要マクロデータの発表も限られた中で、市場の注目はFRB高官の発言内容に集まった。タカ派のカシュカリ総裁の「利上げの可能性排除せず」、同じくタカ派のボウマン理事の「年内の利下げはない予想」、コリンズ総裁の「想定以上の高金利長期化が必要」等いずれも市場の利下げ期待を後退させる内容であった。また、週末のミシガン大消費者マインド指数(速報)は、センチメントの大幅悪化とインフレ期待の上振れの組み合わせとなったことでスタグフレーション警戒となった。
但し、先週のFOMCでのパウエル議長の利上げ可能性否定発言の余韻が残る中、木曜の新規失業保険申請件数が大幅な予想上振れとなったこともあり、週間で米国債利回りは総じて小幅に低下し、米株価も神経質な動きながらも上昇して終えた。

ソフトランディング or スタグフレーション
米景気が底堅さを維持して高金利が長期化する中で(下図第1象限)、3月までの市場はソフトランディング期待が優勢で(下図第4象限)、一部ではノーランディング期待といった刹那的YOLO風観測も聞かれた。しかし、直近の市場はマクロデータに減速感が散見される中でインフレ期待が高まっていることからスタグフレーション懸念がやや優勢になっている。

米金利は落ち着いているが、、、
4月末にかけて2年物が5%を超え&10年物も4.7%まで上昇した米国債利回りは、5月頭のFOMCでパウエル議長が市場が危惧していた利上げの可能性を否定したことをきっかけに足元では総じて20bps程低下している(下図参照)。

高金利はまず住宅ローン金利の上昇と貸出金利の上昇を通じて家計負担を高め企業の設備投資を圧迫することで景気減速に寄与する。しかし、賃金はその下方硬直性から企業業績が大きく悪化しない限り低下しないため、高金利の効きは最も遅行的となる。従って、現状は景気に減速感が見られるものの、雇用市場は依然として堅調な状況が続いている。また、原油価格が強含みのため、インフレ期待が高まりやすい。
景気堅調持続のままインフレが低下するとしたソフトランディングは理屈上は極めて可能性が低い。通常、インフレ低下は景気悪化を意味するのであり、物価安定と雇用最大化を最大のマンデートとするFRBにとって利下げの大義名分は十分となる。しかし、景気減速が明確化してもインフレが減速しないスタグフレーション下ではFRBは利下げに踏み切れない。流石に1980年代前半のボルカー議長の時のような高インフレ対応で景気悪化に目をつぶって断固たる利上げを強いられる可能性はないだろうが、賃金インフレの収束に時間がかかり且つ原油価格の強含みが続く程、スタグフレーション・リスクが高まり、利上げの可能性も高まる。
日経225オプション6月限IVは大幅低下
4月中旬には米CPI予想上振れをきっかけにしたインフレ期待上昇から利下げ期待が後退する中で金利上昇が進行。一方で米Q1GDP減速等景気減速データが見え始めたことからスタグフレーション警戒に発展。続いてイスラエルとイランを巡る地政学リスクが台頭。更にはASMLとTSMCによる半導体市場見通し悪化を受けてMagnificent7の決算懸念拡大。こうした不透明材料が相次いだことでボラティリティは大きく上昇した。その後、地政学リスクの鎮静化に加えて内容の良し悪しは別にして決算発表通過でマクロ以外の不透明感が低下したことで4月末以降はボラティリティが低下回帰した(下図参照)。

日経225は煮詰まり感強まり、上下いずれかに大きく動く可能性も
5dMAの対25dMAと75dMAカイリの標準偏差で定義した"MA convergence"(下図参照)はゼロ近辺まで大きく低下したため、今後は上下いずれかに大きく動く可能性も念頭に置くべきか。

本内容にある過去データ及び将来の見積、予測、予想に関する情報が正しいとは限りません。また、本内容は特定の銘柄、取引を推奨するものではありません。取引に当たっては、ご自身のご判断でお願いします。売買で被られた損失に対し、著者は何らの責任も持ちません。