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資産クラス毎の値動き分析、各種株価指数イベントの考察、アノマリーの検証、225オプションのリスク管理備忘録です。日本株&デリバティブの運用と金融翻訳で生計立てています。

備忘録: マクロン大統領の仏ヤケクソ解散総選挙を控えて

6/9(日)に仏マクロン大統領が欧州議会選での大敗を受けて下院解散を発表して以降、特に欧州金融市場の動揺が続いている。6/10(月)からの1週間で、仏CAC40指数は約6%下落し、Stoxx50ボラティリティ・インデックスは14ポイントから20ポイント近くへ急騰し、仏独10年物国債の利回り格差は50bpsから80bps近くまで約30bps拡大した。先週は極右ルペン氏がマクロン大統領との協力姿勢を示したことから警戒が後退し、株・債券共にやや戻しとなったが、今週は選挙直前週の思惑から株・債券共に再度売り込まれる流れとなり、安値を更新して終えている(下3図、上から株、国債、株ボラティリティの5/31以降の推移)。

この間、米株は仏株に大きく連れ安することはなかったが、先週末にかけて安全資産逃避の流れから米国債利回りは低下した。日本株は6/17(月)に大きく下げ、市況解説では仏政治危機の影響も要因の一つとされた。

弱気扇動筋によると、極右政権誕生ともなれば、仏のEU離脱のみならずNATO脱退や、果てはナチス台頭時を想起させるといったトンデモ話も聞かれる。金融市場が最も懸念しているのは、思想信条の右左関係なく、政権交代によって現状でEU許容基準を超えている財政赤字が一層拡大して、欧州債務危機の再来につながることである。似た状況として記憶に新しいのは、2022年9月の英トラスショック(トラス政権の光熱費家計支援や大規模減税の大盤振る舞い発表に、BOEの50bps利上げと保有国債売却開始発表と債務管理庁の国債発行の大幅増額発表が重なり、米国の利上げ行き過ぎと経済のオーバーキル懸念から大きく動揺していた市場に債券自警団が止めの鉄槌を下したやつである。Bloombergの記事によれば、足元で仏株・仏国債共にトレーダーのヘッジポジションはパンパンに膨らんでいるらしい。

仏下院議員選挙は2回投票制で、1回目で過半数票を得た候補者がいない場合に2回目の決戦投票が1週間後に行われる。この決選投票は必ずしも上位2候補で争われる訳ではなく、1回目の投票で12.5%以上の表を得た候補者全てが進めるため、余計に結果が読みづらくなる。選挙は極右・中道・左派の三つ巴ではあるが、極右優勢は直近の世論調査で明らかであり、ポイントは極右が過半数議席を取れるかだが、こちらは厳しいだろうというのがコンセンサスとなっている。その場合、マクロン氏率いる与党連合が少数与党として政権を引き続き担う可能性も出てくる。

こうしたことから、1回目で極右が過半数議席を取ることが確実にならない限り、来週末の決戦投票まで日本の株式市場の反応も消化不良にならざるを得ないと思われる。今週、日経225は根拠不明確のまま2.6%上昇したが(配当再投資や外人買いからのショートスクイーズとも言われているが)、対岸の火事故に我関せずとしてこのまま捨て置くことが最適解なのかどうかは来週末の決選投票の結果次第となる。

悲しいかな、世界の週末イベントの結果を真っ先に織り込まねばならない宿命にあるのが日本市場である。例年7月上旬はETF換金売りから需給悪が懸念されるタイミングであるため弱り目に祟り目とならなければいいのだが。

 

 

 

 

                                                                                                                                               

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