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資産クラス毎の値動き分析、各種株価指数イベントの考察、アノマリーの検証、225オプションのリスク管理備忘録です。日本株&デリバティブの運用と金融翻訳で生計立てています。

Weekly Market Summary: 2023/1/13

1/9-1/13: 株式市場は好調な米欧香港vs軟調な日本でパフォーマンスのデカップリング続く、日本株は日銀引締転換の観測強まりから円高加速が足枷

 

 

今週回顧

米12月CPIや1月ミシガン大学短期インフレ期待の低下を受けて、インフレ減速軌道入りが鮮明となり、早期の緩和転換への論拠を強める恰好で米株高・米債券高・ボラ下げ・ドル安につながった。FRB高官の目先の利上げ幅低下を肯定するハト派発言が相次いだことも好感された。リスク選好姿勢は、仮想通貨の急回復からもうかがえた。実質金利の低下を追い風に金が1,900ドル越えとなり、ドル安や中国の需要増加期待を反映して原油や銅も買われた(下2表参照)。

尤も、日本株長期金利の上昇と円高加速が向かい風となり、米株に比べて低調な値動きとなった。物色的には、中国の需要回復期待を囃した鉄鋼や来週の日銀政策決定会合での再度の利上げサプライズへの思惑買いで弾みがついた金融の上昇からTopixの堅調ぶりが目立つ一方、ユニクロの失望決算も響き日経225は低調となった(下図参照)。NTレシオは先月の日銀政策決定会合以降で14倍割れが定着し、ジリ安の傾向が続く。

 

米12月CPI発表当日の動き

今や雇用統計以上に注目度の高いCPIだが、3か月連続の予想下振れ期待を織り込む形で株式市場は事前上げに動いていた。しかし、結果はきっちり予想通りで着地し、中味も先週の雇用統計で確認された賃金伸び率の低下とは整合しないサービスコストの上昇継続という好ましくないものであった。また、同時に発表された新規失業保険申請件数も予想を上回る低下を見せたため、株式市場の反応は下落と見ていたが、、、

確かに当初は下げた。事前期待の高さから、結果が予想を下回らなければ、市場の反応は失望売りというのが常識的な想定である。しかし、毎度おなじみの後講釈で、インフレと利上げのダブル減速が意識された上、FRB高官のハト派発言で金利低下に弾みがつき、イベント通過でボラティリティも急低下し、株式は上昇ということらしい。

一方、夜間の日経225先物は、読売新聞の12日引け後の「日銀が17、18日の金融政策決定会合で大規模緩和の副作用を点検し、必要な場合は追加の政策修正を行う」との報道をきっかけに、政策修正観測の強まりから円高が加速し、米金利の大幅低下を受けた米ドル安も足枷となり、軟調な展開に終始した(下図参照)。

 

ドル円の日経225変動に対する説明力高まる

今年は、日本側の日銀総裁交代を控えた金融政策の引締転換への思惑に加え、「利上げ&増税で極楽浄土」念仏を唱える財務真理教熱烈信者の岸田内閣の存在が円高圧力として燻り、一方で米国側でも利下げや量的引締解除といった緩和転換への思惑がドル安圧力として働きやすいため、日米両側から円高ドル安の流れが想定される(下図参照)。

昨年はドル高に支えられ、グローバル比較で相対的優位に推移した日本株だが(下図参照)、今年は利上げと円高がダブルパンチとなり、相対的劣位の推移となることが懸念される。

実際、日経225の変動に対する説明要因としてドル円の説明力が先月の日銀政策決定会合以降で大きく上昇している一方で、米ダウ平均の説明力は低下している(下図参照)。米金利低下を受けて米株が上昇しても、ドル安の方がよりネガティブに日本株に働くという状況である。今年は円買いと日経225売り(NTレシオ売り)が有望トレードの予感。

こうした想定の背景にあるのが2007年相場とのマクロ環境的な類似性がある。前年の2006年半ばの米国はGDPギャップがプラ転直前にあった2004年6月に開始した利上げ局面の最終盤にあったが、このタイミングで日本は量的緩和を解除して後、2007年2月には無担コール翌日物レートを0.25%から0.50%へ引き上げる周回遅れの利上げを行っている。そして、2008年のリーマンショックを先取りする形で起きた2007年8月のパリバショック後の9月に米国は利下げを開始し、その後は円高ドル安の流れが定着して日本株の相対的劣位が続いた(下2図参照)。

 

 

 

 

                                                                                                                                               

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