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資産クラス毎の値動き分析、各種株価指数イベントの考察、アノマリーの検証、225オプションのリスク管理備忘録です。日本株&デリバティブの運用と金融翻訳で生計立てています。

Weekly Market Summary: 2022/10/21

10/17-10/21: 積極的利上げと景気後退懸念を巡る不透明感は依然高いが、それなりの底堅さを維持する景気指標及び企業業績から強気筋の盛り返しも見られる。週末には12月FOMCでの利上げ幅縮小の可能性報道もあり、株式市場は短期的な出直り局面に移行か?

 

足元の実質金利の動き

通常、政策引締時には名目金利の上昇とインフレ期待の低下を通じて実質金利は上昇傾向を示すものだが、10月以降は名目金利の上昇とほぼパラレルにインフレ期待も上昇しており、実質金利水準はほぼ足踏み状態となっている。景気や企業業績の底堅さが続く中で高インフレの長期化が意識されているのは気になる点である。一方で、実質金利の安定は短期的に株式市場にとって朗報であるが、中長期的にバブル回帰からインフレ再加速のリスクもはらむ。インフレ高進を受けて、FRB金利評価の軸足を名目から実質に移しているが、ターミナルレートの目処が固まりつつある中で、インフレ期待がジリ高となると、実質金利が低下して引締効果が殺がれると見たFRBの政策スタンスへの影響も注目される。

10/21(金)の12月FOMCでの利上げ幅縮小への期待上昇と日銀円買い介入

デイリー総裁の「利上げペースを緩める時期に差し掛かりつつある」発言をきっかけに米10年債利回りは4.33%から4.22%へ急低下。ブラード総裁の同様の発言に加え、「次回FOMCでの12月利上げ幅縮小の是非を討議」とのWSJ報道を受けて、米株式市場は一気にリスクオン点火。ブラックアウト入り直前で、久方ぶりに株式市場が渇望していたFRBの景気&金融市場配慮の姿勢が総意ではないにせよ確認できたことで、少なくとも次回11月のFOMCまでは、米株式市場の金融政策に起因した下値不安は後退したと見るべき。これで、ミクロの不安材料である来週発表予定のGAFAM決算に対しても、既に期待値はかなり下がっているため、余程のネガティブサプライズにでもならない限り、発表後は材料出尽くしとなる可能性が高まった印象。

前回の日銀の円買い介入は9月FOMC直後の9/22夕方頃に行われ、ドル円は146円目前から141円台前半まで急落後にわずか2日で元の水準を回復した。今回は、週末の23時過ぎという商いの薄いタイミングで実施され、ドル円は152円目前から146円台半ばまで急落後に1円程戻して朝を迎えた。

介入を通じた円吸収の一方で国債買入による円放出も行っているためネットの効果は元々ないに等しい。こうした状況では、投機筋が待ってましたとばかりにドルの押し目買いに走るであろうし、FRBが着実なペースで量的引締遂行中のドルはどんどん吸収され(下図参照)、ベースマネー比の観点からも円安ドル高反転は黒田総裁の任期中は見込みにくい。

円買いの原資は外貨準備(大部分は外為特会で保有される米国債)だが、金利ほぼゼロの政府短期証券で調達した円を米国債に突っ込み、介入に伴う売却でそれなりの利金に加えドル高による莫大な為替差益が転がり込む財務省はウハウハのはずだが、緊縮財政を錦の御旗に増税路線まっしぐらというのはどういう了見か?この局面でひろゆき氏を広告塔に米株インデックス投資を推奨する金融庁に比べれば、財務省には相場観があるのかもしれないが。そもそも自称先進国の日本が1兆ドル超の巨額外貨準備を抱えておく必要性があるのか疑問である。

検討使岸田首相が30兆円規模の経済対策を策定予定とのことだが、-2%弱の日本経済の需給ギャップに比べると規模感が大きすぎる感じはする。先日発表された日本の全国CPIは3.0%で、シャワーも制限され、昆虫食まで推奨される欧州の2桁越えに比べればまだましとも言えるが、インフレ火に油を注ぐような巨額減税 with 巨額国債発行から成るバラマキ財政計画を発表した後の英金融市場の混乱ぶりを見るにつけ、日本が同じ轍を踏まないためにも、円買い介入の大儲け分を原資に、赤字国債発行は出来るだけ少なくし、債券自警団の逆鱗に触れないように願う。

 

 

 

 

                                                                                                                                               

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