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資産クラス毎の値動き分析、各種株価指数イベントの考察、アノマリーの検証、225オプションのリスク管理備忘録です。日本株&デリバティブの運用と金融翻訳で生計立てています。

Weekly Market Summary: 2023/3/3

2/27-3/3: 金利上昇に負けず、利上げ耐性を示す米株。

 

 

今週回顧

米経済指標は一部を除き引き続き堅調なデータが示され(上表参照)、米国債利回りは総じてジリ高推移し、3/2(木)には欧州のインフレ上振れからの金利上昇に連れ高する形で30年債利回りも4%越えとなったが、3/3(金)週末は前日のボスティック総裁の利上げ休止言及(上表参照)に加え、金利先物市場での金利引き上げ見通し引き上げの一服を受けて急低下した。10年債利回りは、週間ではほぼ変わらずだが、BEI上昇主導で実質金利は急低下となった。

米株は上述のボスティック総裁のハト派発言が効いて小幅高。先週まで軟調な推移となっていた香港株は、中国のPMI上振れを好感して反発。年初来のBest Performer欧州株は堅調持続、円投資で見るとパフォーマンスの高さが際立つ。

株式のボラティリティは昨年10月以降に下落トレンドに移ってから、底這い傾向は既に3か月程続いている(下図参照)。この背景には、米インフレの減速の鮮明化にともなうターミナルレート見通しに対する不透明感が解消されたことが挙げられる。

しかし、足元ではインフレ減速ペースが鈍化し、インフレ高止まり懸念からの利上げ長期化懸念が出始めている。実際、金利先物市場では1月までは年内2回弱の利下げを織り込んでいたが、2月以降はターミナルレートが5.5%まで急ピッチで引き上げられ、来年の利下げ回数見通しも引き下げられている(下図参照)。

一方の株式市場は、足元の景気指標の強さを利上げ耐性の強さと解釈する強気が続いている。加えて、FRB高官から具体的なターミナルレート水準に関する言及がないことも好感されている。今週は、利上げ停止の可能性に言及したボスティック総裁の発言によって株式市場の強気が更に強化された。

結果として、債券市場と比較した株式市場の楽観は直近1年のピーク水準にある(下図参照)。来週はADPやJOLT、そして週末の雇用統計と雇用関連の注目指標の発表が相次ぐ。更に注目度が高いのは、3/7(火)のパウエル議長の議会証言である。ここ暫く、パウエル議長から株式市場の楽観を牽制するような発言は聞かれていないため、タカ派な政策見通しとともに株式市場を戒めるような発言が出るようであれば、高官ハト派発言で慢心状態の株式市場の弱気転換に火がつき、ボラティリティ上昇となる。逆に、ハト派的内容であれば、3/14(火)のCPIあるいは3/22(水)のFOMCまでは楽観強気ムードは続くことになる。また、3/10(金)には黒田総裁最後の政策決定会合となるが、最後のネガティブサプライズの可能性を煽る向きをいるようだが、少数派であろう。こちらもサプライズなしであれば、上方モメンタムを強化することになる。

日経225は、週末に400円超の大幅上昇を見せた。好調な月次を示したユニクロインパクトが大であったが、高配当、低PBR、小型バリュー、大型グロースなどサイズ、スタイルを問わず総じて堅調で、6営業日連続で新高値銘柄数は100以上を記録している。

これ程上がった材料は不明だが、ショートカバーが上昇加速につながったのは間違いない。下図は、日経225オプション4月限の今週の出来高及び建玉残の動きを示しているが、週末のCallの出来高急増と建玉残大幅減少が確認できるため、日経225の急上昇を受けた先物デルタヘッジ買いからのCallのショートカバーに向けた動きが主要因であると思われる。

下図は、満期まで42日(カレンダーベース)時点のIV Smile Curve過去6限月分を示しているが、90% Putは半年前に比べて10 vegaも低下している。ボラティリティの買い方は一貫して苦戦を強いられた一方で、売り方は"Easy Money"状態が続いた。しかし、ここまで低下すると、売り仕掛けもやりづらいが。

 

 

 

 

                                                                                                                                               

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