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資産クラス毎の値動き分析、各種株価指数イベントの考察、アノマリーの検証、225オプションのリスク管理備忘録です。日本株&デリバティブの運用と金融翻訳で生計立てています。

Weekly Market Summary: 2022/1/28

1/24-1/28: FOMCを挟んで乱高下、イベント通過でも動揺免れず、株式市場はFRBの利上げペース拡大や早期B/S縮小を織り込み直す動き、大幅安連発で短期的に売り一服となろうが、当面は戻れば売りが基本線か?

 

曜日別の主な材料は、

[1/24(月)]:

 米1月製造業PMI - (実)55.0 (予)56.7 (前)57.7、

 米1月サービス業PMI - (実)50.9 (予)55.0 (前)57.6

[1/25(火)]:

 米11月ケース・シラー住宅価格指数 - (実)18.3% (予)18.0% (前)18.5%、

 米1月消費者信頼感指数 - (実)113.8 (予)111.8 (前)115.2

[1/26(水)]: 

 FOMCパウエル議長記者会見

[1/27(木)]: 

 米10-12月期GDP - annualized q/q - (実)6.9% (予)5.5% (前)2.3%、

 米12月コア耐久財受注 - m/m (実)0.4% (予)0.4% (前)1.1%、

 米新規失業保険申請件数 - (実)260K (予)260K (前)290K

[1/28(金)]

 米12月コアPCEデフレーター - y/y (実)4.9% (予)4.8% (前)4.7%、

                                    - m/m (実)0.5% (予)0.5% (前)0.5%、

 米1月ミシガン大学消費者信頼感指数 - (実)67.2 (予)68.7 (前)70.6

 

年内のFOMCは毎会合利上げが現実味

金利先物市場は、年内約5回の25bps利上げを織り込んでいる。FOMCは年内に後7回あるが、QT(量的引締)と利上げの同時実施は流石にないであろうから、実質後6回の内5回の利上げとなると、殆ど毎会合利上げとなる。無論、1回で50bps利上げを行えば話は別だが(3月50bps利上げを10%程度の確率で織り込んでいる)。

楽観のツケを最後に払うのは決まって株式市場

いずれにしても、パウエル議長が「インフレ抑止の利上げ加速と早期B/S縮小の必要性」を明確化したことで、株式市場は、パウエルプットに対する幻想の完全放棄と金融引締の速やかな織り込み直しを迫られることになった。

昨年夏以降からインフレの持続性が警戒されて以降、債券市場はFRBの間違いを早急に織り込んで行ったが、株式市場は「我関せず」状態を続けた。昨年12月のFOMCでは、パウエル議長が「インフレは一時的」との認識を撤回したが、それでも株式市場は年末に向けて高値邁進を続けた。FRBの次の行動である「ハト派訂正とタカ派明確化」のタイミングを正しく予測することが、株式市場での投資パフォーマンスを大きく左右することになった。

量的緩和で買われたリスク資産は、量的引締で売られるのが自然

こうなると、「進も地獄、引くも地獄」である。足元で7%水準のインフレを数回の利上げで抑え込むのは不可能である。しかも、今回はコロナ、脱炭素政策、大辞職トレンド等の供給制約要因が長期化しそうである。ならば、利上げ幅拡大やペース加速、債券売却を通じたB/S縮小等でより積極的に需要減少に訴えるしかない。

1980年代初めのボルカー時代のような断固たる利上げを行い、景気後退と株価低迷を招いてでもインフレ鎮静化を図るのか?それとも、株式市場に配慮した緩やかな利上げを行った結果、インフレ高進の歯止めがきかなくなり、断固とした引締の必要が高まることで、より深刻な株価暴落を見るのか?

2018年は利上げ最終局面で耐えられなくなった株式市場が暴落したが、その後の利上げ量的引締の停止示唆で回復することができた。今回は、景気が死のうが、株価が暴落しようが、インフレ後退が見えてくるまでは利上げ停止など出来る状態にはない。インフレ鎮静化の目処が立たないと、次の利下げ&量的緩和は見えてこない。

FRBのウォーラー理事は先月、FRBのB/Sの規模については、GDPの約35%となっている現状から20%前後まで縮小させるのが好ましいと発言した。2年で4兆ドル台から8兆ドル台へ倍増した資産規模を同じ2年で元の4兆ドル台へ戻すには、毎月1,700億ドル弱減らして行かないと目標到達とならない。債券の再投資停止ではなく、債券売却で縮小ペースを上げるとなると、リスク資産への下押し圧力は大きなものになる。B/S縮小に関しては、最大の焦点は縮小開始のタイミングと規模である。結局、量的緩和で買われた分は、量的引締で売られるということ。

金利バリュエーションから見たS&P500の下落余地一考

単純なバリュエーション想定だが、仮に比較的早期に米10年国債利回りが現状の1.8%から中立金利の2.5%まで70bps上昇すると、PERにも応分の下押し圧力がかかり、PERは現状の19.7倍から16.9倍までの低下が見込まれ、S&P500は現状の4,430から3,800まで約14%下落することになる。これは、あくまで金利側面からの想定だが、EPSの14%成長がないとPER低下を中和できないことになる。スタグフレーションともなれば、EPS下落も見込まれるため、更に下落率が高まることになる。

225オプションATMプットのIVに見られるbackwardation

下図は、2022年限月の225オプションATMプットのIVの期間構造を時系列表示した図。米VIX先物が、1/18に期近(2月)>期先(3月)のbackwardationに転じたのにタイミングを一にして、225オプションATMプットのIVも1/19以降でbackwardationの急拡大を見せた。そして、1月FOMC結果判明直前の1/26にbackwardationのピークを付けた後は収束の気配を見せている。イベント通過でボラティリティは低下したものの、225指数は1月FOMC結果を受けた1/27に大幅安となった。

今回は、FOMC以外にもウクライナ情勢の緊迫化や決算シーズン入り等の不透明要因が重なり、IVのbackwardationの急拡大につながったと思われる。目先はcontangoに戻るとしても、年内はFOMC接近を迎える度に、期近プット買いの妙味が増す展開が想定される。

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