The less volatile market, the easier life!

資産クラス毎の値動き分析、各種株価指数イベントの考察、アノマリーの検証、225オプションのリスク管理備忘録です。日本株&デリバティブの運用と金融翻訳で生計立てています。

イベント備忘録: 2023年米債務上限問題を巡る金融市場の動き - 2011年との比較

2~3年毎に繰り返される金融市場の動揺を人質にねじれ米議会が弄ぶチキンゲーム党争茶番には辟易するが、市場参加者にとっては大事な売り仕掛けネタであるのも事実である。

2011年8月8日の米国債ショックは、債務上限引き上げ成立後にもかかわらず、S&Pが米国の長期債務格付けを格下げしたことによる世界同時株安を指すが、この日のS&P500は約6.7%もの下落となった。しかし、細かく確認してみると、オバマ大統領と共和党のベイナー下院議長の交渉決裂となった同年7月23日以降7月31日の民主・共和合意までに約3%下落し、その後は市場の懸念が米景気後退や欧州債務危機の深刻化にシフトしたことで8月5日までに更に約8%下落し、結局、8月8日の米国債ショック前までに約11%もの下落に見舞われていたことになる。

こうした株式市場の下げに呼応したリスクオフの流れから、VIXは急上昇し、米ドルが売られた。一方で、震源たる米国債はリスクオフからの安全資産逃避の流れから逆に買われる展開となった(下図及び表参照)。

今回は、前回のような動揺は見られず、いずれの資産クラスも落ち着いた動きとなっている。米地銀やクレディスイス等金融機関の相次ぐ破綻や景気減速懸念はあるものの、2011年当時のようなマクロ上の懸念の深刻化には至っていない点もこうした動きに寄与したと考えられる(下図及び表参照)。

 

 

 

 

                                                                                                                                               

本内容にある過去データ及び将来の見積、予測、予想に関する情報が正しいとは限りません。また、本内容は特定の銘柄、取引を推奨するものではありません。取引に当たっては、ご自身のご判断でお願いします。売買で被られた損失に対し、著者は何らの責任も持ちません。

 

Weekly Market Summary: 2023/6/9

6/5-6/9: 日経225、イケイケどんどんは一旦終了?

 

 

今週回顧

米株はISMサービス業の下振れや新規失業保険申請件数の大幅増加から利上げ見送り観測が強化され、小動きながら依然として大型グロース優勢で、S&P500は昨年10月安値からの上昇率20%越えで強気相場色入り。5/25のエヌビディア好決算をきっかけにしたAI熱狂が支配的となり、物色の広がりを欠く中、週前半はラッセル2000や地銀株にも物色の裾野が広がったものの、直ぐに息切れとなった。利上げ見送り&リセッッション懸念の組み合わせでは、総花的な動きにはなりづらい。

日本株はジェットコースター様相。外人爆買い継続期待(図1参照)にショートコールのヘッジ踏み上げ(表1参照)で週前半は怖いものなしの上伸を見せるも、円高進行や日銀植田総裁の保有ETF処分言及による切取御免ヘッドラインアルゴ発動で週後半は一転急反落、そして週末は幻SQ回避で急反発と何とも慌ただしかった。

図1: 年初来累積の外人及び個人売買動向

表1: 日経225オプション7月限の建玉残上位

こうした流れから、ボラティリティは日経VIが年初来高値23.16を付けた一方で、米VIXは年初来安値13.65を付ける等好対照な動きとなった(図2参照)。

図2: 日米欧株価指数ボラティリティ

来週想定

個人的には、高所恐怖症でやや身がすくむ位置まで登った感がある日経225。長期のベテラン投資家は皆同じ感覚でいると思われる。しかし、「売り向かい -> 踏み上げられ -> 損切り」の負のループが本格的な売り仕掛けを躊躇させる要因になっているため、手掛けづらいのが実情とは思うが、今週の激しい上下動を見る限り、売り仕掛けが入りやすい局面に移行したと考えるのが自然であろう。

グローバル比較で見た年初来パフォーマンスは日本株が突出して高い(図3参照)ことが影響して、日経225変動率に対するドル円の説明力(ドル高(安)=日経225高(安))が高まっている(図4参照)。

図3: 日米欧株価指数年初来パフォーマンス推移

図4: 日経225変動率の説明要因別年初来累積インパク

来週は、米5月CPI、米FOMC、日銀政策決定会合というドル安円高リスクを伴うイベントが予定されているため、注意が必要と考える。先週発表の米雇用統計は強弱混在の結果となったが、今週のISMサービス業と新規失業保険申請件数は景気減速を示唆する内容であった。ここで、円高による日経225のアンダーパフォーマンスが想定されるシナリオは、CPIが予想を下振れし、FOMCで想定通りの利上げ見送りもドットチャート及びパウエル議長会見がハト派的な内容に落ち着いた場合である。また、週末の日銀政策決定会合でも想定通りの現状維持になったとしても、植田総裁の記者会見でのYCC修正やETF処分言及からヘッドラインアルゴ発動でも、円高による日経225のアンダーパフォーマンスが想定される。但し、下方向の動きは短期的で、直ぐに回復する可能性にも留意は必要であろう。いずれにせよ、ノイズによるふるい落しに惑わされないように努めることが肝要である。

 

 

 

 

 

                                                                                                                                               

本内容にある過去データ及び将来の見積、予測、予想に関する情報が正しいとは限りません。また、本内容は特定の銘柄、取引を推奨するものではありません。取引に当たっては、ご自身のご判断でお願いします。売買で被られた損失に対し、著者は何らの責任も持ちません。

 

Weekly Market Summary: 2023/3/3

2/27-3/3: 金利上昇に負けず、利上げ耐性を示す米株。

 

 

今週回顧

米経済指標は一部を除き引き続き堅調なデータが示され(上表参照)、米国債利回りは総じてジリ高推移し、3/2(木)には欧州のインフレ上振れからの金利上昇に連れ高する形で30年債利回りも4%越えとなったが、3/3(金)週末は前日のボスティック総裁の利上げ休止言及(上表参照)に加え、金利先物市場での金利引き上げ見通し引き上げの一服を受けて急低下した。10年債利回りは、週間ではほぼ変わらずだが、BEI上昇主導で実質金利は急低下となった。

米株は上述のボスティック総裁のハト派発言が効いて小幅高。先週まで軟調な推移となっていた香港株は、中国のPMI上振れを好感して反発。年初来のBest Performer欧州株は堅調持続、円投資で見るとパフォーマンスの高さが際立つ。

株式のボラティリティは昨年10月以降に下落トレンドに移ってから、底這い傾向は既に3か月程続いている(下図参照)。この背景には、米インフレの減速の鮮明化にともなうターミナルレート見通しに対する不透明感が解消されたことが挙げられる。

しかし、足元ではインフレ減速ペースが鈍化し、インフレ高止まり懸念からの利上げ長期化懸念が出始めている。実際、金利先物市場では1月までは年内2回弱の利下げを織り込んでいたが、2月以降はターミナルレートが5.5%まで急ピッチで引き上げられ、来年の利下げ回数見通しも引き下げられている(下図参照)。

一方の株式市場は、足元の景気指標の強さを利上げ耐性の強さと解釈する強気が続いている。加えて、FRB高官から具体的なターミナルレート水準に関する言及がないことも好感されている。今週は、利上げ停止の可能性に言及したボスティック総裁の発言によって株式市場の強気が更に強化された。

結果として、債券市場と比較した株式市場の楽観は直近1年のピーク水準にある(下図参照)。来週はADPやJOLT、そして週末の雇用統計と雇用関連の注目指標の発表が相次ぐ。更に注目度が高いのは、3/7(火)のパウエル議長の議会証言である。ここ暫く、パウエル議長から株式市場の楽観を牽制するような発言は聞かれていないため、タカ派な政策見通しとともに株式市場を戒めるような発言が出るようであれば、高官ハト派発言で慢心状態の株式市場の弱気転換に火がつき、ボラティリティ上昇となる。逆に、ハト派的内容であれば、3/14(火)のCPIあるいは3/22(水)のFOMCまでは楽観強気ムードは続くことになる。また、3/10(金)には黒田総裁最後の政策決定会合となるが、最後のネガティブサプライズの可能性を煽る向きをいるようだが、少数派であろう。こちらもサプライズなしであれば、上方モメンタムを強化することになる。

日経225は、週末に400円超の大幅上昇を見せた。好調な月次を示したユニクロインパクトが大であったが、高配当、低PBR、小型バリュー、大型グロースなどサイズ、スタイルを問わず総じて堅調で、6営業日連続で新高値銘柄数は100以上を記録している。

これ程上がった材料は不明だが、ショートカバーが上昇加速につながったのは間違いない。下図は、日経225オプション4月限の今週の出来高及び建玉残の動きを示しているが、週末のCallの出来高急増と建玉残大幅減少が確認できるため、日経225の急上昇を受けた先物デルタヘッジ買いからのCallのショートカバーに向けた動きが主要因であると思われる。

下図は、満期まで42日(カレンダーベース)時点のIV Smile Curve過去6限月分を示しているが、90% Putは半年前に比べて10 vegaも低下している。ボラティリティの買い方は一貫して苦戦を強いられた一方で、売り方は"Easy Money"状態が続いた。しかし、ここまで低下すると、売り仕掛けもやりづらいが。

 

 

 

 

                                                                                                                                               

本内容にある過去データ及び将来の見積、予測、予想に関する情報が正しいとは限りません。また、本内容は特定の銘柄、取引を推奨するものではありません。取引に当たっては、ご自身のご判断でお願いします。売買で被られた損失に対し、著者は何らの責任も持ちません。

 

Weekly Market Summary: 2023/2/24

2/20-2/24: 景気及びインフレ指標の上振れを受けて、米株は"No Landing"(無着陸論)まで持ち出す強気派が後退して大幅安、日本株は米金利高&植田氏の国会所信聴取でのハト派姿勢確認からのドル高が支援しての限定的下げ

 

 

今週回顧

決算は小売が失望もAI需要に強気なエヌビディアが好感される等まちまち。しかし、経済指標の予想上振れがFRB高官に利上げ長期化の論拠を与え、タカ派発言が相次いだことから、先週までは景気の強さを背景とした"No Landing"論で武装していた米欧株式市場も、今週はその強気が殺がれる格好に(下2表参照)。一方、日本株は米金利の上伸によるドル高と週末の黒田氏後任の植田氏国会所信聴取でのハト派姿勢確認からの戻りが幸いして、下げは限定的であった。

金利先物市場では、一層の利上げ織り込みが進み、年内後3回x25bpsの利上げが完全に見込まれる状況だが、来年の利下げ織り込みには未だ変化は見られない(下図参照)。米国債利回りは、短期ゾーン主導で上昇し、2年債利回りは昨年11月の4.7%台を上回る4.8%台へ上伸した。

10年物実質金利は、BEIの上昇が限定的となる中、昨年12月以来の1.5%超えとなった。S&P500指数では、予想EPSがジリジリ低下する中で予想PERが上昇傾向にあるため、金利&業績の両面で割高感は高まっている(下図参照)。

 

来週の注目

消費者信頼感指数やISM景況感指数(特に、製造業)等の上振れ傾向が続いた場合の金利の動きが焦点。4%目前まで戻してきた米10年債利回りが、4%を超えて昨年10月につけた4.25%を目指すような動きになると、株にはモメンタム系の売りが広がる可能性も高まるため、警戒が必要。ボラティリティは、債券の上伸に遅れて、株式でもやや動意が見られるが、VIXの25超えを目指した動きが出るか要注目。

日本株については、3/1(水)の日銀債券市場サーベイ2月調査と3/3(金)の2月東京都区部CPIを注目。前者は、前回12月発表の市場機能度判断DIの急悪化が直後の日銀政策決定会合での長期金利の許容変動幅拡大につながったとの見方があるため、結果次第では植田氏のハト派所信発表を受けてひとまず静まった引締転換への思惑が高まる可能性はある。また、後者は、2月からの政府の電力料金家計補助の効果が反映されるため、見かけ上大きく減速する見込みであり、その場合の株価の反応がどうなるか注目。

 

 

 

 

                                                                                                                                               

本内容にある過去データ及び将来の見積、予測、予想に関する情報が正しいとは限りません。また、本内容は特定の銘柄、取引を推奨するものではありません。取引に当たっては、ご自身のご判断でお願いします。売買で被られた損失に対し、著者は何らの責任も持ちません。

 

Weekly Market Summary: 2023/2/17

2/13-2/17: 底堅い景気と持続的減速のインフレから強すぎる景気と減速ペース鈍化のインフレへの移行鮮明化で適温相場に暗雲

 

 

今週回顧

インフレの減速ペースに鈍化の兆しが見え始めている。今週発表の1月CPIは、前年同月比では何とか下落トレンドが続いているが、前月比では伸び加速となっている。下図は、CPI、コアCPI、帰属家賃インフレ、サービス価格インフレの前月比年率換算の推移を示しているが、直近のモメンタムが1年続いたらベースの前月比年率換算のインフレ伸び率はいずれも5%越えとなっており、特に家賃とサービス価格(賃金)の高止まりが浮き彫りとなっている。一方で、小売売上高を筆頭に実体経済では上振れとなる指標が相次ぎ、これまでの適温相場の前提が崩れ始めている。

結果的に、タカ派FRB高官が次回FOMCでの50bps利上げに言及するなど利上げ長期化懸念が高まっている。昨年12月FOMCの50bps利上げから前回FOMCの25bsp利上げで利上げ幅が縮小し、年内1-2回の利下げまで織り込んでいたのも束の間、債券市場は一足早く年内の利下げ可能性を排除するなど、ターミナルレート模索から利上げ幅やペースをめぐる思惑に逆戻りである(下2図参照)。

一方で、株式市場はお決まりの楽観平常運転で、債券市場ほどの警戒を示していない。FRB高官発言のタカ派orハト派トーン次第で多少上下するものの、強すぎる景気が利上げ長期化を跳ね返して尚、"No Landing"の可能性も聞かれる等、本格的な調整モードではない。S&P500に関しては、予想EPSがほぼ不変の一方で、予想PERは足元の実質金利の上昇を受けて割高感が高まっている(下図参照)。投資家の強気はEPSとPERの両方の上昇を前提にしているようだが、正しいのは債券市場かそれとも株式市場か?

ボラティリティが死に、レンジバウンドの相場が続く中で(下2図参照)、トレンド転換が起こるきっかけは、やはりマクロの材料ということになりそうである。いずれにせよ、次回FOMCまでに出てくる景気指標やFRB高官発言を見守りつつ、株式市場が強すぎる景気を好感する流れからインフレ再加速への警戒にいつ転じるのか見守りたい。

 

来週の注目は週後半に集中、週末の新日銀総裁植田氏の所信聴取と米PCEデフレーター

来週月曜日は米国休場、木曜日は日本祝日となるため、立会日数は限られ、方向感は出にくいか。ドル円が135円台まで戻り、足元の日経平均の変動はドル円よりも米株の動きの説明力が高まっているため、米金利強含みを通じたドル高が日本株を支える力は限定的と見る。米株の調整売りが始まると、同じマグニチュード日本株も下げそうである。予定されているFRB高官の発言後の市場反応や週末の日銀総裁植田氏の国会での所信聴取や米PCEデフレーター発表を前に仕掛け的な売りが出るか注目される。

 

 

 

 

                                                                                                                                               

本内容にある過去データ及び将来の見積、予測、予想に関する情報が正しいとは限りません。また、本内容は特定の銘柄、取引を推奨するものではありません。取引に当たっては、ご自身のご判断でお願いします。売買で被られた損失に対し、著者は何らの責任も持ちません。

 

Weekly Market Summary: 2023/2/10

2/6-2/10: 強烈雇用統計から、金利先物市場の政策金利予想は上方シフト進み、タカ派当局とのギャップ縮小へ。

一方、米株は景気堅調で利上げ耐性ありとでも見ているのか、下げは限定的。ドル円は、日銀総裁人事を巡るメディアの観測報道相次ぐ中、ヘッドラインに振らされる。

 

 

今週回顧と来週展望

2/1のFOMCまではパウエル議長もディスインフレの進行を認め、リスク資産市場の楽観的上昇にも牽制を入れず等から、インフレ減速&底堅い景気認識が支配的な適温相場が続いていた。実際に、エネルギー価格と住宅価格を起因としたインフレがこれまでの積極的利上げ効果により明確な減速軌道が見えている。

今後のインフレの浮沈は、残る大きな牙城であるサービス価格、即ち、賃金インフレにかかっている。労働市場の逼迫が懸念される中で発表された2/3の雇用統計は強烈上振れとなり、一転して利上げ長期化懸念の台頭を招き、今週は早速に債券市場が金利上昇を織り込み始めた。

雇用統計発表後、2/7のパウエル議長のインタビューでは、概ね前回FOMCでの会見でのスタンスが踏襲され、その他FRB高官の発言も政策金利の高水準維持への言及はあるものの、具体的なターミナルレート水準の引き上げへの言及は見られず、サプライズとはなっていない。

金利先物市場が見込むターミナルレートは5.19%へ上昇し、昨年12月FOMC時の2023年ドットチャート中央値とほぼ同水準になり、そのタイミングも6月から8月に予想後倒しとなったが、依然として年末までに1回弱の利下げを見込んでいる。しかし、2024年に関しては、4回に利下げを見込む当局の予想に対して、市場は依然として6回の利下げを見込んでおり、強烈雇用統計の影響は出ていない。

2/10のミシガン大学消費者信頼感指数でのインフレ期待上振れが、米国債利回りの更なる上昇に寄与(下表参照)。10年物金利は、週間で実質金利とBEIがそれぞれ10bps程上昇し、都合20bps程上昇した。

一方で、米株式市場の下げは限定的。強烈雇用統計を受けて、利上げ長期化でも米経済は耐えられると見ているのか?昨年末からの上昇は、EPSに殆ど変化がない中、実質金利低下によるPER上昇主導であった(下表参照)。しかし、このトレンドは足元で反転しており、実質金利水準から見た株価はやや割高ゾーンにある(下図参照)。

 

2/7(火)パウエル議長のインタビュー(2:40 am JSTから)前後の値動き

強烈雇用統計後でタカ派変節が警戒されたパウエル議長ののインタビューであったが、最終的には大きな変化なしとの市場判断に落ち着いた。尤も、発言内容の硬軟度に応じて、道中はN字推移で振らされたが、、、

 

来週の注目は米1月CPIと、近々予定される新日銀総裁植田氏の所信聴取。

前年同月比CPIはNowCast予想の0.65%に対し市場予想が0.5%、前月比は同0.46%に対し0.4%(下図参照)。前年同月比コアCPIはNowCast予想の6.48%に対し市場予想が6.2%、前月比は同5.59%に対し5.5%となっている。NowCast予想は、CPIとコアCPI共に市場予想を上回っているが、特にCPIがジリ高推移しているのがやや気掛かり。コアCPI予想は横ばいだが、足元では中古車価格の再上昇も確認されており、財価格のインフレ動向も注意が必要。

日銀総裁植田氏については、市場が今後どのように消化していくは全く未知。同氏のこれまでの発言からはタカ派ハト派の色付けは難しい。これまでのタスキ掛け人事が崩れ、学者出身の総裁になる訳だが、マクロ経済のプロであることはわかっても、政策運営や市場との対話等については、近々予定される国会での所信聴取をまずは手掛かりにしていくしかないが、今後も暫くはヘッドラインだけで踊りを始めるアルゴに振らされる局面が頻発するかも。

 

 

 

 

 

 

                                                                                                                                               

本内容にある過去データ及び将来の見積、予測、予想に関する情報が正しいとは限りません。また、本内容は特定の銘柄、取引を推奨するものではありません。取引に当たっては、ご自身のご判断でお願いします。売買で被られた損失に対し、著者は何らの責任も持ちません。

 

Weekly Market Summary: 2023/2/3

1/30-2/3: 経済指標は製造業の失速と労働市場の逼迫、主力ハイテク決算は予想未達が目立ったが、FOMC及びパウエル議長のハト派姿勢が顕著な株高に

 

 

今週回顧と来週展望

米経済指標は、落ち込みが続く製造業と堅調ぶりを示す非製造業で対照的な数字の一方、雇用市場は総じて逼迫状況が確認された。インフレが欧州でも減速が鮮明となる中、BOE及びECBの政策決定会合では予想通りの利上げ決定も、利上げサイクルがピークに近いことが示唆された。しかし、強すぎる雇用統計を受けて、期待インフレは低下も実質金利は上昇した。主力ハイテク決算は、予想未達から弱さが目立った。

尤も、インフレ減速の明確化を好感して上げてきた米株価も、週末の雇用統計が強すぎたことから、リセッション懸念の後退と見た強気筋とインフレ減速の後退懸念と見た弱気筋の対立は続くか?

FOMC後の最初の当局者発言となったデーリー総裁は、「追加引き締めと景気抑制的なスタンスを当面維持するというのが政策の方向」と話している。

来週はブラックアウト明けでパウエル議長を含む複数のFRB高官講演が予定されており、強烈な強さを示した雇用統計を受けた後でどのような姿勢を示すか注目される。国内は何と言っても、2/10の提示が強く意識されている日銀総裁人事案。米株に比べ頭を押さえられた感が強い日本株だが、順当に雨宮氏なら円安&株高、サプライズ人事の山口氏なら円高&株安が市場のコンセンサス的な見方。米株高&米ドル安あるいは米株安&米ドル高で、日本株の動きは米株に比べて上下に限定的であったが、日銀総裁のサプライズ人事でもあると、米株安&円高日本株の下げが増幅される可能性もあり、なかなかに不確実性が高い。

FOMC当日の値動き

パウエル議長は、年内の利下げは念頭にないとしながらも、市場の楽観を厳しく戒めるような明確な牽制発言をしていない。また、現状のインフレ減速と堅調な労働市場の組み合わせを自画自賛し、ソフトランディングへの自信も深ている様子。一方で、今後、利上げの累積効果によって経済のオーバーキル懸念が高まるようであれば、政策は柔軟に対応するオプション、すなわち緩和転換も有り得ると示唆したことも好材料

FOMC声明文の文言変化に見られるハト派姿勢

FOMC声明文にいくつもの変更が加えられるのは稀だが、今回は以下の3点が注目された変更箇所である。尚、「継続的な利上げが適切」との文言は不変であった。

1. インフレ認識: これまでの「インフレ高止まり」から「インフレが幾分緩和」が加わり、インフレ減速を明確に認める格好に。

2. 露宇紛争のインフレへの影響: 実際のところ、インフレはコロナ・パンデミック以降の巨額の現金給付がきっかけとなって高進したが、インフレの起因を露宇紛争にも求めるFRBがようやくインフレ寄与から除外。

3. 政策金利の軌道見通し: これまでは、「利上げのペース」を念頭に置いた利上げ継続前提の声明であったが、「利上げの程度」と変更したことから、利上げ停止も有り得るとの解釈が可能に。

2023/2/1

Recent indicators point to modest growth in spending and production. Job gains have been robust in recent months, and the unemployment rate has remained low. Inflation has eased somewhat but remains elevated.

Russia's war against Ukraine is causing tremendous human and economic hardship and is contributing to elevated global uncertainty. The Committee is highly attentive to inflation risks.

The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run. In support of these goals, the Committee decided to raise the target range for the federal funds rate to 4-1/2 to 4-3/4 percent. The Committee anticipates that ongoing increases in the target range will be appropriate in order to attain a stance of monetary policy that is sufficiently restrictive to return inflation to 2 percent over time. In determining the extent of future increases in the target range, the Committee will take into account the cumulative tightening of monetary policy, the lags with which monetary policy affects economic activity and inflation, and economic and financial developments. In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities, as described in its previously announced plans. The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.

In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.

2022/12/14

Recent indicators point to modest growth in spending and production. Job gains have been robust in recent months, and the unemployment rate has remained low. Inflation remains elevated, reflecting supply and demand imbalances related to the pandemic, higher food and energy prices, and broader price pressures.

Russia's war against Ukraine is causing tremendous human and economic hardship. The war and related events are contributing to upward pressure on inflation and are weighing on global economic activity. The Committee is highly attentive to inflation risks.

The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run. In support of these goals, the Committee decided to raise the target range for the federal funds rate to 4-1/4 to 4-1/2 percent. The Committee anticipates that ongoing increases in the target range will be appropriate in order to attain a stance of monetary policy that is sufficiently restrictive to return inflation to 2 percent over time. In determining the pace of future increases in the target range, the Committee will take into account the cumulative tightening of monetary policy, the lags with which monetary policy affects economic activity and inflation, and economic and financial developments. In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities, as described in the Plans for Reducing the Size of the Federal Reserve's Balance Sheet that were issued in May. The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.

In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on public health, labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.

 

 

 

 

                                                                                                                                               

本内容にある過去データ及び将来の見積、予測、予想に関する情報が正しいとは限りません。また、本内容は特定の銘柄、取引を推奨するものではありません。取引に当たっては、ご自身のご判断でお願いします。売買で被られた損失に対し、著者は何らの責任も持ちません。