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資産クラス毎の値動き分析、各種株価指数イベントの考察、アノマリーの検証、225オプションのリスク管理備忘録です。日本株&デリバティブの運用と金融翻訳で生計立てています。

Weekly Market Summary: 2022/10/28

10/24-10/28: 米株は、"Bad news is good news"上げ潮相場に、週末は"Good news is good news"で更に増長度合を高める、足元の楽観上げが利上げペース減速期待に根差したものである以上、11月FOMCでのパウエル議長の会見内容次第で悲観転換も

 

 

週間回顧と来週展望

先週に続き、今週も欧米株の堅調ぶりが目立った。アジア株、中でも香港株及び上海株はXi氏の3期続投確定で独裁色の一層の高まりを警戒した下げが止まらず、膠着感の強い日本株も含めて欧米株に劣後する恰好となった(下図参照)。

米株は、ブラックアウト入り直前の先週末に飛び出したFRB利上げ幅縮小期待を織り込む展開が続いた。週前半は、PMIやケース・シラー等下振れる景気指標が目立ったことから逆金融相場終盤に典型的な"Bad news is good news"上昇相場に拍車がかかった。警戒されたGAFAM銘柄の業績については、メタ、アルファベット、アマゾン等失望決算から大きく下げるものが目立ったが、全体で見れば好決算組も多く、上げ潮ムードが強い中で指数へのマイナス影響は軽減された。

金利先物市場では、特に2023年の金利見通しが大きく軟化し、2022年比で利下げを織り込む水準まで低下を見せた(下図参照)。10年債利回りが一時4%割れとなる一方で、10年物期待インフレは小幅に上昇するなど緩和転換を先取りするような動きによって、10年物実質金利は20bps程低下して1.5%となったことも米株にとっての支援材料となった。

ボラティリティの低下も顕著で、VIXは9月以来の25ポイント台となった(右下図参照)。尤も、VIX9Dは依然として高水準で、バックワーデーション状態はこの1週間継続中である。債券版VIXのMOVE指数も下げてはいるが、VIXの下げが大きく、相対的には株式市場の楽観が目立ち過ぎる嫌いがある(左下図参照)。

さて、足元の株価上昇は「利上げ幅縮小」に根差したものである。留意が必要なのは、「利上げ幅縮小」であって「利下げ転換」ではないという点である。「利上げ幅縮小」が干天の慈雨にはなっても、インフレが鎮静化しない限り「高金利」の干天は続く。今やFRB内のハト派は超マイノリティであり、緩和転換への過度な期待は後に大きなしっぺ返しとなる危険もはらむ。

更には、リーマンショックやコロナショックの時がそうだが、利下げに転換しても、企業業績が悪化する限り、株価は上昇トレンドに回帰しない。それが逆業績相場というものである。本格的な金融相場に移行するには悪化した企業業績のボトムアウトが必要となる。

住宅やサービス(賃金)主導のインフレは、直ちに需給が反映されるコモディティ等金融市場で取引されている財とは異なり、鎮静化には時間がかかる。2018年秋の利上げ終盤での暴落は、2年間にわたる緩やかな利上げを経て発生したものだが、FRBの利上げ打ち止め宣言で株価が反発したのは企業業績の悪化がなかったからである。果たして、今回は企業業績が耐えられのかどうか?

いずれにせよ、11月FOMC後のパウエル議長の会見内容が12月FOMCまでの相場の方向性を決めることになるであろう。期待通りに「12月FOMCでの利上げ幅縮小」が示唆されたとしても、それだけでは材料出尽くしとなる可能性が高いと考えているが、どうなるか?

 

 

 

 

                                                                                                                                               

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