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資産クラス毎の値動き分析、各種株価指数イベントの考察、アノマリーの検証、225オプションのリスク管理備忘録です。日本株&デリバティブの運用と金融翻訳で生計立てています。

Weekly Market Summary: 2022/5/27

5/23-5/27: 米株式市場は、9月以降利上げペース緩和観測に加え、各種経済指標からインフレ鈍化の兆候が鮮明化し、センチメント改善から大幅高。主要決算発表一巡し、当面の市場最大の関心はインフレ動向に。

 

 

米株は、長期下落相場での短期上昇となり、S&P500とナスダックは8週連続安を免れた。対照的に、日本を含むアジア株はほぼ横這い。ボラティリティは、HVが高止まる中で、IVが急低下し、オプション買いの妙味が増加。とは言え、VIX先物は水準的にはまだ高い状態が続く。

米国債は小動き。FXは、実質金利のピークアウトに合わせて米ドルも軟化。利下げ効果なく、ルーブルの上昇止まらず。仮想通貨は、テラ崩壊の影響からイーサリアムが急落。コモディティは総じて小高い。

 

先週の住宅関連指標で見られ始めたインフレ鈍化傾向は、今週はより鮮明化。まず、新築住宅販売戸数は、住宅ローン金利の急上昇が効いて、大幅な下振れ。住居費はCPI構成ウェイトが高いため、明確なインフレ低下確認には必要不可欠である。来週5/31(火)発表のケース・シラー住宅価格指数も3月の古いデータであるが、注目される。

また、PCEデフレーターが1年半振りに前年比で低下したことも、インフレのピークアウトの兆候となり得るが、実質個人消費も堅調だったのはやや意外。先週発表の小売売上高が堅調さを示したのは、足元のインフレを念頭に置けば不思議でないが、インフレ調整後でも好調な訳は、実質所得が伸び悩む中で、貯蓄取り崩しが下支えしたことであった。実際、貯蓄率は急低下しており、消費持続力は早晩、限界に達すると見込まれる。

今週の株式市場にとっては、消費が堅調さを維持しつつ、インフレが鎮静化するという最良シナリオに沿った結果だったが、この先の消費は厳しいと見る。来週5/31(火)発表の消費者信頼感指数も注目。

来週の最大の注目は雇用統計である。中でも、平均時給に減速が確認できるかどうかが、下方硬直性の高い賃金に明確な下落が確認できるようになれば、インフレ鈍化の明確化にも大きく寄与するはずである。

インフレ鈍化が明確化するまで当局が利上げの手綱を緩めることはないし、株価も底値確認とはいかない。逆説的だが、株安に伴う逆資産効果はインフレ抑止に効果大となるはずである。特に、米国は家計資産に占める株・投信比率が高く、日本に比べて金額ベースでは約30倍の大きさである。既に、高値から20%以上下落して弱気相場入りしているナスダックが、本格的な戻りを見せることなく低迷が続くと、逆資産効果に伴うインフレ抑止も見込まれる。

足元の金融引き締めによる住宅関連の減速、食料品・エネルギー高による裁量的支出圧迫や貯蓄率急低下が示唆する消費息切れ見通し、株安による逆資産効果に、賃金成長の鈍化が加われば、需要側のインフレ圧力は相当低下すると思われる。株式市場も、こうした需要側のインフレ鈍化の兆候を囃しての短期上昇となっているが、中長期的には、供給側の問題である露宇紛争の終結と中国の厳格なゼロコロナ政策の緩和がないと、確実なインフレ収束とはならない。

FRBは7月までの2回のFOMC会合で各50bps、計100bpsの利上げを示唆しているが、足元の金利先物市場での利上げ織り込みは100bpsを切っている。株式市場も金融引き締めの緩和見通しを好感した買い姿勢を目先は持続するだろうが、インフレ放置を反省して引き締め姿勢に転じたばかりのFRBが拙速に緩和姿勢に転じる可能性は低いと見る。今後の供給側のインフレ圧力の低下が確認できてこその姿勢転換であろう。FRBの政策対応の硬軟度の予測精度が投資のパフォーマンスを大きく左右することが普遍的な真実であることに変わりはない。

 

 

 

 

 

                                                                                                                                       

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