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資産クラス毎の値動き分析、各種株価指数イベントの考察、アノマリーの検証、225オプションのリスク管理備忘録です。日本株&デリバティブの運用と金融翻訳で生計立てています。

sp500指数及びVIXの月中季節性: 第3週の上昇傾向強まる

暫く休んでいたブログ執筆を細々ながら再開。昨年9月以降続いた月末下落アノマリーが今年8月で途絶えたことも心理的重し解消に一役買って、n225が上昇モメンタムを強めている。

8/30付日経朝刊13面に、sp500指数及び VIXに関する個人的にも気になっていた傾向を指摘した以下のような記事が出ていたので検証確認する。

「2021年5月以降、sp500指数は、オプション満期の第3週金にかけて月中安値を付けている。証券会社が販売したオプションのポジション調整が原因とされる。一方、FRB国債購入は、2021年4月以降、下旬のウェイトが高まり、オプション絡みの波乱の歯止めになっている。テーパリングはこうしたパターンを崩す可能性がある。個人投資家のオプション買い急増で、HV低位安定の一方でIVが上昇し、ボラティリティに歪みをもたらしている。」

記事によると、今年4-6月の株式やオプション取引に占める個人の売買シェアは55%とのこと。実際にオプション建玉は拡大傾向が続いている(下図参照)。コロナ対策の現金給付や割増失業給付で懐が潤ったロビンフッターの大挙参入の影響は投機のゆがみとしてこれまでも度々指摘されてきた。

出所: CME

下表に、sp500及びn225の指数及びIV-HV spreadの週別変化率をまとめた。第3週は、指数の動きが最も弱く、IV-HV spreadが拡大しており、その傾向は5月以降で強まっている。これまでも、折に触れて第3週に波乱を招く事はあったが、個人によるオプション買い建玉拡大が続く一方で、toppyな指数水準の下で政策当局によるテーパリングから利上げ&量的引締への移行に伴う市場流動性低下から波乱リスクも高止まりとなる可能性が高まる。

本来、証券会社はネガティブガンマを嫌い、オプションのポジションを過度にショート側に傾けにくい。売るにしてもボラティリティのスプレッドを厚めにして、高めのIVを提示するものだが、それでも値ごろ感無視で多くの個人投資家が裸オプションを買いに来ている。そうしてIV水準が持ち上げられても、相場が大きく動かなければ証券会社の勝ちだが、大きく動くと、ガンマのみならずベガの影響が一瞬にしてデルタとして出現し、ヘッジコスト増大につながる。第3週のIV-HV spread拡大は、証券会社のヘッジに伴う波乱に対する思惑がぶつかり合う鉄火場になりやすいということ。引き続き、オプション建玉残と指数水準には留意が必要。