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資産クラス毎の値動き分析、各種株価指数イベントの考察、アノマリーの検証、225オプションのリスク管理備忘録です。日本株&デリバティブの運用と金融翻訳で生計立てています。

Weekly Market Summary: 2021/5/14

5/10-5/14: 悪いインフレ懸念の高まりを受け、荒れ模様: 株式はいつもの癇癪、債券は相変わらず冷静、インフレのお供「コモディティ」は狂乱様相も

曜日別の主な材料は、

  • 5/10(月): 10年物BEIが2.54%に上昇
  • 5/11(火): 
  • 5/12(水): 米4月CPI上振れ - 前年比 (実)4.2% (予)3.6% (前月)2.6%、ビットコインにマスク爆弾投下
  • 5/13(木): 米4月PPI上振れ - 前年比 (実)6.2% (予)5.9% (前月)4.2%、米新規失業保険申請件数 - 小幅改善
  • 5/14(金): 米4月小売売上高下振れ - 前年比 (実)0.0% (予)1.0% (前月)10.7%

株式: インフレ高進懸念が吹き荒れる嵐の中、日本株の相対的な下げの大きさが目立った。米株の下げが時間外でも続くと、日本株には米株の2日分の下げが前日比で反映されるため、どうしても過剰反応に見えてしまう。

日経平均ルール改定の記事も、2000年4月に行われた大量入替&ITバブル崩壊に伴うハイテク株の下げ騒動のデジャブ想起させ、センチメントの悪化につながった可能性も。少数の肥満児に歪められ指数と日銀からダメ出しされた日経はユニクロをどうにかして薄めて、3銘柄で指数変動の1/4が決まる現状を改め、指数の存在意義を証明したい。既存銘柄が株価換算係数1のままでは、未採用の値がさ株を新規採用してユニクロのウェイトを落とすしかないが、株価換算係数1での新規採用では、リバランスフローのインパクトが巨大になるためそれは避けたい。故に、新規採用銘柄は1未満の株価換算係数となるのだろうが、それだとユニクロのウェイトは抜本的に薄まらない。2000年4月のリバランスで指数の連続性が絶たれたn225が、新たな連続性断絶を招いてしまう。知り合いの専門家によると、n225ではなくn550にすべしとのことであった。

株価指数ボラ: sp500 VIXは、ダウンサイドヘッジ需要増大で米4月CPI発表後のピーク時には30目前まで上昇したが、週末にはやや落ち着きを取り戻し20割れ。nk225 VIもsp500 VIXと同様の道筋を辿ったが、20台半ばと下がり切れていないのは、ワクチン接種の遅れによる日米格差が原因か。ワクチン接種が加速しない限り、ボラティリティの日米格差も残ると見込まれる。

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n225オプション6月限のIV smile curveも上方シフト。deep OTM Putの裸売りのため、滅多にデルタヘッジしないのだが、3日で2,000円超の下げに見舞われ、流石に細めなデルタヘッジを余儀なくされた。ベガヘッジは、デルタヘッジ開始時点では妙味が薄れたため見送り。

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債券: 米10年債利回りは、4月CPI発表後はやや軟化したものの、週間では約6bps上昇。2年債利回りは変わらずで、ベアスティープニング続く。嵐のような相場の端緒となった10年物BEIの大幅続伸であったが、週間では約2bpsの上昇で、実質金利は約4bpsの上昇した。

現金給付による所得上昇でマネーサプライ急増も、コロナ終息見えず消費躊躇で貯蓄滞留が続く一方で、現金給付、割増失業給付やコロナ下での行動制約から労働参加低迷で雇用増加進まず賃金上昇と半導体や原材料等川上物資の供給制約あり。増えた金がコロナ終息で一気に消費に向かう前に、物の供給拡大体制が整わないと、業績拡大&景気回復に沿った良いインフレにならず、スタグフレーション懸念も。

通貨: 米ドルは、インフレ高進の減価リスクを抱えながらも、4月CPIを受けた金利水準の強含みや景況感の強さが好感され小高い。インフレが一時的と見る当局と長期化リスク高いと見る市場の対立が続くが、昨年からの3度の現金給付によるマネーサプライ急増を受けた市場のインフレ警戒も頷ける。リーマンショック後の量的緩和ベースマネー増加だけで済んだが、現金給付はマネーサプライの急上昇にはつながった。

ビットコインは、仕手本尊の肩書が加わったマスク氏自身の買い煽り&リカクからの決算停止爆弾投下で急落。「サステナビリティ重視の電気自動車屋だから、過大な電力喰らいのビットコインは駄目」などと体よく弄ばれたファスト思考のイナゴが死屍累々。インフレヘッジ資産としてコモディティ化した暗号通貨だが、ビットコイン機関投資家の資金も流入し、既に時価総額1兆ドル越えと言われ成熟感が高まってきた印象。反対に、上げ潮なのがイーサリアムなどの電力消費量が相対的に少ない新興勢。

コモディティ: FRBの「テーパリングは時期尚早」スタンスに変化が見られない以上、市場のインフレ長期化を見越したコモディティ物色の旬も長期化へ。投機筋が目一杯ロングを膨らませたことで年初来で凄まじい上昇を見せている穀物系だが、収穫見通し改善からの供給制約緩和が意識されたコーンや小麦は売り圧力にさらされ大幅安。銅は、チリ鉱山でのスト決行リスクへの思惑を睨みながら高値一服。原油は、先週末のコロニアル・パイプラインへのサイバー攻撃の影響が残り小幅高。

来週以降のn225想定: インフレ高進懸念は、来月の米物価関連指標発表でも、FRBが強調するベース効果が残ると見込まれ、暫くは燻り続けそう。来週も米住宅関連指標やFOMC議事録の発表があり、インフレ懸念を巡る思惑を絡めた神経質な動きが想定される。センチメント改善のためにも、ワクチン接種の加速に期待したい。

とは言え、瞬間的に2,000円超下げたことで突っ込み警戒感も醸成されたため、決算発表一巡で業績評価の見直しが入ってもおかしくないと考える。epsは3月末の1,300円弱から1,950円と5割増にもかかわらず、インフレ警戒の過剰反応でperは22倍半ばから14倍半ばまで低下を余儀なくされた。株式市場は、今期5割増益では期待に届かずと判断しているが、強欲に過ぎる印象。

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perが14倍台半ばまで低下したことで、米10年債利回りで見たn225のイールドスプレッドは5.3%まで上昇し、現時点での割高感はないと感じる。

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仮需は、信用買い残が高水準の一方で売り残は低下しており荷もたれ感は残る。まずは5dMA水準である28,360を速やかに終値で上回れるか注目。目先の需給イベントは、5/27のMSCI半期リバランスが控える。スタンダード指数が追加0&除外29銘柄で、5/27のリバランスフローは5,000~6,000億の売りが見込まれる。時価総額5,000億未満が除外対象となり、以前に比べてスタンダート採用の時価総額ハードルは上がっている。高成長やM&A経由の寡占化で企業の大型化進む世界的潮流に対して、低成長に甘んじている日本は相対的に企業が小粒化しているからとも言える。スモール指数は、追加16&除外86銘柄で、こちらも採用ハードルは上がっている。

 

 

 

                                                                                                                                       

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