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資産クラス毎の値動き分析、各種株価指数イベントの考察、アノマリーの検証、225オプションのリスク管理備忘録です。日本株&デリバティブの運用と金融翻訳で生計立てています。

Weekly Market Summary: 2021/2/26

2/22-2/25: 米1.9兆ドルコロナ対策は期待から警戒対象に転換し一気にリスクオフに、米長期金利の急上昇に対する当局と市場の見方は対立: 楽観的な当局 対 懐疑的な市場

曜日別の主な材料は、

  • 2/22(月): 
  • 2/23(火): 米パウエルFRB議長上院議会証言
  • 2/24(水): 米パウエルFRB議長下院議会証言
  • 2/25(木): 米新規失業保険申請件数(+)ve
  • 2/26(金): 米1月個人消費支出(+)ve

市場はFRBパウエル議長の「インフレ率はベース効果によって一時的に上昇にとどまる」とする見方に対して懐疑的な反応を示し、株・債券共に売られる逆金融相場の様相に。反面、インフレ懸念が相対的に好感されたのが、原油や銅等のコモディティと米ドルであった。

株式: 米長期金利の急上昇が重しとなり、世界的に大幅調整となった。金利上昇と言ってもまだ2%以下であり、決して業績回復を正当化できない程の金利上昇とは思えないが。1.5%のsp500配当利回りが一時1.6%付けた10年債利回りを下回るなど、利回り妙味の比較ネタが悪材料扱いされるのは、超低金利に慣れ過ぎてしまった代償か。

金利高と米ドル高を受けて新興国株式が最も弱かった。グロースからバリューへのローテーションが続く中、小型シクリカル系の下げは限定的。月末安アノマリーは健在で、週末のn225の1,202円(4%)安は下げ幅ワースト10位だったらしい。

株価指数ボラ: 金利急上昇を受けた株式市場の動揺により、ボラも大きく上げた。n225 VI及び90/110skewは、指数が急落した1月末の年初来高値水準まで急騰した。

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本日日経朝刊のスクランブルでは、昨年7月以降の指数(topix)が月前半上昇/月後半下落の傾向を示しているとの言及があったが、n225 VIは、昨年7月以降のコロナ相場に限らず、過去6年の日付別変動率で見ても(下図参照)、月前半まちまち/月後半上昇の傾向が見られるのは興味深い。

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米債券: パウエル議長の議会証言前は落ち着いた動きであったが、ハト派トーンが再確認された議会証言を受けても金利上昇懸念は完全に払拭されず、寧ろ、警戒視する市場との認識ギャップが際立つ格好となった。低調な国債入札結果やデュレーション調整のヘッジ売りも巻き込んで、一段の国債利回り上昇につながり、ハイイールド債にも売りが及んだ。一時、1.6%越えでコロナ直前水準を上抜けた10年債利回りは週末こそ急ピッチの上げに対する反動で下げたが、FRBによる長期国債買入の拡充やYCC導入への言及でもない限り、市場の不安はくすぶり続けるか。

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FX: 米ドル指数は、米国債利回りの上げに連動してしっかり。コモディティ価格上昇を受けて強含んでいた資源国通貨も週後半には失速し、米ドルの強さが目立つ週となった。ビットコインは、イエレン氏のトークダウンが重しとなり調整モード、一時はインフレヘッジの代替資産的な位置付けもされたが、やはり金利上昇がネガティブ視されるバブル資産ということか。

コモディティ: 金は、期待インフレ率が高止まる中での米国債利回りの急上昇で実質金利が大きく上昇し、急ピッチの下げに見舞われた。一方、実需商品の原油や銅は、株式や債券が金利上昇に身構える中でも景気回復期待を根強く織り込む形で堅調ぶりを発揮。米ドル高はややネガティブだが、インフレ懸念がある現状では最も安心な資産か。

来週のn225想定: 来週は、ISM製造業景気指数や雇用統計等の重要な指標発表が予定されているが、業績相場を通り越して一気に逆金融相場の様相を呈している現状では、内容が良ければインフレ懸念を高め、悪ければ景気回復期待に水を差し、いずれの場合も好感されにくい可能性も考慮すべきかも。

長期金利の急上昇に対しては、例えば、10年債利回りが2%超えるとか、nydowが高値から15%以上下げるとか、実質的に大きな調整を伴わない限り、当局による思い切った対応策は発動されないと見る。その意味では、3/16からの次回FOMCが重要日程になる。1.9兆ドルコロナ対策もPUA等支援策が失効する3月中旬には成立させる必要がある。3月中旬までの2週間の当局のスタンス(金利上昇放任or牽制)が注目される。

個人的には、今の市場は金利上昇を過大評価し、業績回復を過小評価していると考える。週末の米国債利回りは急ピッチの上げに対する反動で低下しており、早晩、株式も景気回復再評価局面に回帰すると思うが、長期金利が落ち着かないようであれば、下げが始まって間もないこともあり、更なる値幅調整もありうる。しかし、あくまでもテクニカル的な過熱感の調整であり、値ごろ感からの買いも期待される。予想は難しいが、レンジ想定は28,500~29,500とする。

 

 

                                                                                                                                       

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