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資産クラス毎の値動き分析、各種株価指数イベントの考察、アノマリーの検証、225オプションのリスク管理備忘録です。日本株&デリバティブの運用と金融翻訳で生計立てています。

Weekly Market Summary: 2021/1/29

1/25-1/29: 米追加経済対策の実現性疑念及びコロナワクチン普及遅延等これまでの期待材料に燻っていた懸念の拡大に加えて、米GameStop巡る混乱と中国インフレ警戒モードへの転換で市場変調、高値警戒とヘッジファンド換金売り連想から好業績株も事実売りへ

曜日別の主な材料は、

  • 1/25(月): バイデン氏 "Buy American"条項補強、メルクがコロナワクチン開発打ち切り
  • 1/26(火): 中国人民銀行蛇口締め出す、香港ハンセン急落
  • 1/27(水): FOMCで景気回復鈍化懸念への言及、米GameStopショック
  • 1/28(木): 米アップル好決算も反落、米GameStop買禁で反落
  • 1/29(金): 米J&Jの開発ワクチンの有効性は期待外れ、米GameStop買再開で反騰

リスクオフ優勢で、高リスク資産は大幅下落。株式や銅の下げが大きく、ハイイールド債も弱含み。一方で、米ドルは堅調、米国債も短期ゾーンを中心にイールドは低下した。米VIXは、昨年10月末以来の40を窺う水準まで急騰した。

株式: 上値追いの好材料もない中で、米GameStopを巡る混乱と中国人民銀行の引締スタンス発露という新たな懸念材料を受けて、急速にリスクオフが広がり大幅下落に見舞われた。1月月間のリターンでは、米nydowと独daxはマイナスに転じている。決算発表シーズン酣で、日米共にグロース株中心に好業績が目立つものの、高値出尽くし感以上に米GameStopで苦境にあるヘッジファンドの利の乗ったLongポジションの解消からの連想売りが強い印象。

空売りHedge Fund対全力買いReddit根城のロビンフッターのGameStop株を巡る攻防は、一昔前の株マフィアの仕手株抗争を彷彿とさせる。「Wall Street vs Main Street」とか「Eastblishment vs Anti-establishment」とも形容される対立は、金融市場に俄かに現出した米国社会の分断の一縮図。

"short squeeze"に敗北したHedge Fundは利の乗ったLongポジションの解消を迫られ、救済資金を仰ぐ羽目に陥った。プラットフォーム提供のRobinhoodもシステム増強や運転資金コストの増大に迫られて増資&融資調達に走らざるを得なくなった。しかし、クソ株を時価総額2兆円越えまで買い上がる米online mobsの連帯パワー恐るべしである。「金融民主主義」とか「富める者から貧する物への所得移転」という大義の下、GameStop株は捕食欲に満ちたイナゴタワーと化している。

バブルの徒花と片付けるのは簡単だが、どのような最終決着を迎えることやら。買い方も信用&オプションの2階建てポジションだったりすると、金利負担も含めてゼロコストという訳ではない。理論上、株価は無限大だが、日銀のETF買いのように無尽蔵に買えるなら兎も角、循環取引同様に買い手がいなくなり、資金的に行き詰れば破綻である。後は買い方内部のチキンゲームである。ゼロサムゲームである以上、誰かがババを引くことになる。ヘッジファンド破綻も怖いが、買い方が破綻した時の追い証から強制決済に至る負のループも怖い。SECが"manipulation"絡みで監視しているとか、Wall Streetを敵視する左巻き民主党政権が金融委員会で取り上げるとも言われており、当局のアクションにも注意が必要である。

ソース: インベスティング・ドットコム 日本版

 株価指数ボラ: FOMCの弱気コメントや米GameStop混乱、中国人民銀行の引締スタンス転換がトリガーとなり、日米共にspike up。昨年10月末の米大統領選直前の水準まで一気に上昇した。米VIXのSkewはやや低下で大幅下落は想定されていないが、期間構造(下図参照)は右肩下がりのカーブとなっており、3月限までは特に高い不確実性が見示唆されている。

ソース: vixcentral.com

債券: リスク選好低下から、米国債イールドは全般に低下。FOMCでの政策スタンス維持が確認される中で、景気回復期待も根強く長期債イールドが相対的に強含み、イールドカーブはベアスティープニングの様相。ハイイールド債は、株式程の動揺は見られないものの弱含みの流れ。

FX: リスクオフ優勢で米ドルは堅調、対円では月末リバランスの影響で105円を窺う動き、対元では人民銀行の市中資金吸収やレポ金利5日連続上昇を受けて軟調人民銀行が緩和から引締への政策シフトし、主要国に先駆けて過剰流動性環境から脱却することは、今後のグローバルのリスク資産全般の撹乱要因になり得る。ビットコインは今週は大人しくしてると思ったら、米テスラのマスク氏がツイッターのプロフィールに"#bitcoin"と投稿したことが材料視されて急戻し、節操の無さは変わらないと見える。

コモディティ: リスクオフが色濃く出たのが銅で、コロナ感染拡大や人民銀行の引締めモード転換から連想される中国需要の減退懸念から値を崩した。同じリスク資産でも、原油は在庫統計からの需給タイト観測もありやや底堅い動き。金は、強含みの米ドルと安全資産への逃避ニーズとの綱引きで小動きな展開。

 来週のn225相場想定: 落ち着き処を探る展開か。決算発表が続くが、GameStop株を巡る展開次第では、好業績銘柄が売りで反応して下げが続きそう。また、中国を含むアジア市場の動きも注意が必要に。テクニカル的には早めに27,892の25dMA水準を終値で明確に回復できるか注目。米追加経済対策の議会協議(民主党は財政調整法活用で、上院単純過半数での成立を目指すらしい)やワクチン接種に関する進展は下支え程度にしか期待できないか。週後半には1月米雇用統計を睨んだ神経質な流れが見込まれる。以上から、n225の想定レンジは27,200~28,200とする。

 

 

 

 

 

 

                                                                                                                                         

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