The less volatile market, the easier life!

資産クラス毎の値動き分析、各種株価指数イベントの考察、アノマリーの検証、225オプションのリスク管理備忘録です。日本株&デリバティブの運用と金融翻訳で生計立てています。

Weekly Market Summary: 2022/6/17

6/13-6/17: 超Eventfulな1週間 - イベントに絡んだ思惑フローと解消フローが交錯して乱高下。

 

 

 

振り返り

先週末の米5月CPIショックに端を発したリスク資産全面安の動きが終始重しとなった「兵どもが夢の跡」的な1週間であった。週半ばのFOMCに向けた警戒に加え、FOMC同日決定のECB臨時会合に対する思惑やスイス中銀による全く想定外の利上げを含む各国中銀の通貨安&高インフレ回避の対抗利上げラッシュからリセッション懸念が急速に台頭した。

FOMCでの75bps利上げをサプライズ無しとして直後の株式市場がお得意の楽観解釈で上げた分、週末にかけては当局の経済成長見通しの引き下げと失業率見通しの引き上げに加えソフト/ハードデータ共に実際に悪化する経済指標がより悪材料視され、下げ増幅となった(下図、日経225期近先物の日中&夜間別4本値推移参照)。

主要国では唯一「利上げ俱楽部」未加入の日本も、週末の政策決定会合を前にYCC放棄の妥当性を巡ってヘッジファンドの債券先物売りや円買いにさらされる中、対する日銀の「怒りの」政策据置を受けたポジション解消から流れが急反転するなど乱高下に見舞われた。日本株n225が週間で6.7%下落、これはリーマンショック以降では15番目に高い下落率。欧米株に比べて値持ちが良かった分、下落率はやや高めに出た。

S&P500 VIXは30越え。あらかじめ予想されていたことだが、今年のボラティリティの山とコンタンゴの谷は基本的にFOMC前後のタイミングと重なる(下2図参照)。

日経VIも急動意し、30をうかがう流れとなった。7月限日経225オプションのIVは、指数急落からカーブが大きく上方に浮揚。また、FOMC前後の様子見で減少した商いが、週末には米トリプルウィッチングを控えた週末要因も手伝って、Put主導で大きく増加し、Put側IVの顕著な上げからSkewも急速に立ち上がった(下2図参照)。尤も、週末日中に平均して3vega強上昇したDeep OTM Put(K/S<80%)のIVだが、3連休控えた米株市場が無難にトリプルウィッチングをこなした所為か、ナイトを経た土曜早朝時点では3vega強低下しており、ボラティリティは往って来いとなっている。

米国債利回りは、10年債と2年債共に3.5%水準を試し、瞬間的に逆イールド状態が見られたが、週後半にはリセッション懸念優勢で軟化した。一方、BEIは利上げ&量的引き締めの強化加速を反映して急低下を見せ、10年実質金利は一時+0.9%弱まで上昇した。炭鉱のカナリアたるハイイールド社債は下げ止まりは見られない。コモディティも、原油やメタルを中心にリセッションによる需要低下の連想から値を消した。最もきつい下げに見舞われたのが自称「インフレヘッジに適したコモディティ」の仮想通貨。一部業者の取り付け騒ぎに起因したクレジットリスクの高まりから激しく売られた。

 

指数見通し

S&P500は、年初来で1,100ポイント(約23%)下落して弱気相場入りしているが、この下げをPERとEPSで要因分解すると、PERの寄与が約-1,600ポイントなのに対して、EPSの寄与が約+600ポイントとなっている(下表参照)。参考までに、前回の金融引き締め時である2018年の株価ピーク時とボトム時のデータをのせた(下々表参照)。

前回の政策金利の天井は2.5%で、今回の見通しに比べるとかなり低いし、25bps利上げ都合9回というゆるやかな利上げの動きもあって、業績悪化には至らず、EPSもほぼ変わらずであった。PERから見た(EPSは不変)S&P500の想定ボトムは、2018年時を参考にすると、10年国債利回り3.5%、イールドスプレッド3.0%のやや甘め想定から導き出されるPER約15.4倍を当てはめると約3,500ポイントとなり、現値から4.5%ほど下となる。

政策金利が来年に4%弱を見通し且つFRBはもう長期国債の買い手にはならない状況で、PERへの低下圧力はまだ続くであろうし、これからは景気減速即ち業績悪化から来るEPS下落の織り込みになると思われるが、どの程度の下落になるかは、インフレ退治がいつ完了するか次第である。

 

望ましい指数の下げ方

米経済は3度の現金給付と根強い供給制約からGDPギャップはプラスとなっている。一部の耐久消費財や住宅関連では需要減速の兆しが見られるが、本丸のヒト(雇用)とサービスは依然として高い需要がある。インフレ鎮静化のためには、需要を減らすか供給を増やすかだが、FRBが関与できるのは需要側だけである。中露要因から供給制約は長期化すると見込まれる以上、8%超のインフレに対して政策金利がようやく1.625%では、インフレ退治には急ピッチ且つ大幅な利上げが必須である。

今週のFOMCでは今年末時点の政策金利の中央値が前回の1.875%から3.375%に大幅に切り上がり、経済見通しも引き下げ、結果的に景気を犠牲にしてもインフレ鎮静化に邁進する姿勢を強調した(今更遅いと言っても、是非もなし)。リーマンショック前の利上げステージでは小刻み利上げを繰り返したことが、バブル温床の長期熟成とその後のショックの甚大化と長期化につながったと見られている。インフレのピークアウト(の明確な兆し)無くして利上げ打ち止めも無く、必然的に株のボトム確認も無い。ここは、ボルカー流の積極利上げを行い、早期のインフレ退治からリスク市場全般の早期ボトム確認と動揺の短期化を目指すべきである。

 

 

 

 

                                                                                                                                       

本内容にある過去データ及び将来の見積、予測、予想に関する情報が正しいとは限りません。また、本内容は特定の銘柄、取引を推奨するものではありません。取引に当たっては、ご自身のご判断でお願いします。売買で被られた損失に対し、著者は何らの責任も持ちません。

 

Weekly Market Summary: 2022/6/10

6/6-6/10: 米5月CPIの予想比上振れとミシガン大学消費者信頼感指数の過去最低値への落ち込みが、インフレのピークアウトとソフトランディングへの期待を打ち砕く

 

 

 

米株式市場の下落は長期戦に?

6/7に米ターゲットが過剰在庫を受けた値下げ予告がインフレのピークアウト期待につながって上昇した株式市場であったが、翌6/8には米インテル半導体需要の軟化予測を示唆したことが根強い原油高と相まってインフレ高進&景気後退懸念の再燃となり下落するなどちぐはぐ感はあるが、CPI発表やFOMCを控えたクリティカルなタイミングで神経質にならざるを得ない状況にあるからとしか言いようがない。

注目の5月CPIはコアCPIと共に予想比上振れとなった。財に関しては前年比ベースで明確な下振れとなったものの、住居費等サービスは上昇圧力が依然として根強い。とりわけ懸念されるのが、前月比の数字になかなか減速感が見られないことである。インフレ鎮静化に時間がかかればかかるほど、積極的利上げとスタグフレーションへの警戒は大きくならざるを得ない。

 

 

 

 

 

 

                                                                                                                                       

本内容にある過去データ及び将来の見積、予測、予想に関する情報が正しいとは限りません。また、本内容は特定の銘柄、取引を推奨するものではありません。取引に当たっては、ご自身のご判断でお願いします。売買で被られた損失に対し、著者は何らの責任も持ちません。

 

Weekly Market Summary: 2022/6/3

5/30-6/3: 米株式市場は反落 - 9月以降の利上げ休止期待は雇用統計の予想外の上振れで後退、FRB当局者のタカ派発言や企業トップからの悲観的な経済見通しも冷や水

 


 

 

 

MSCIの半期リバランスに伴うノイズはあったものの、先週に続き「脱欧米入亜」的流れが支配的な1週間であった。米株は週間での下落に逆戻りで、先週のベアマーケットラリーは束の間に終った。一部FRB当局者の市場での9月以降の利上げ休止期待への釘差し発言がマクロ面での重しとなり、JPモルガン、GSやテスラ等企業トップからの経済に対する悲観的見通しがミクロ面での新たな警戒感を引き起こした。一方、日本株は引き続き「リオープン」期待が膨らむセンチメントがハードルとなり売り込みづらく、ドル建目線での割安感もエントリーを誘い、外人短期モメンタム筋の先物買いが牽引する形で上値追いとなった。

ボラティリティは、先週に続き低下が一層進んだ。S&P500VIXは、指数が弱含む中でも上方向への動意は見られず、4月下旬以来の25割れ。VIX先物コンタンゴ状態が維持されており、相場変動上昇の兆候は今のところ見られない。

日経VIも、4月中旬以来の20割れ水準まで急低下を見せた。日経225オプションの満期まで35日(カレンダーベース)時点のボラティリティのスマイルカーブ推移を示した下図からは、ダウンサイドが先月比較で概ね5~7ベガも低下していることが確認できる。

米国債利回りは強含みの経済指標に反応し、長期ゾーン主導で上昇した。BEIもここもとの落ち着きが崩れて若干の上昇となった。FXは、今週も資源高謳歌の露ルーブルの大幅続伸が目立ったが、暗号通貨は落ち着いた流れとなった。コモディティでは、OPECプラスでの増産幅拡大を受けて瞬間弱含んだ原油が「供給不足の解消には増産幅」と受け止められて大幅高の一方、ウクライナの輸出再開の観測を受けた小麦は急落となった。

来週は、ブラックアウト期間でFRB当局者の口は塞がれる。注目の経済指標は米5月CPIだが、発表は週末のため道中は材料不足となる。

 

 

 

 

                                                                                                                                       

本内容にある過去データ及び将来の見積、予測、予想に関する情報が正しいとは限りません。また、本内容は特定の銘柄、取引を推奨するものではありません。取引に当たっては、ご自身のご判断でお願いします。売買で被られた損失に対し、著者は何らの責任も持ちません。

 

イベント備忘録: MSCI半期銘柄入替2022/05

MSCI 2022/05 半期銘柄入替は、Standardがほぼフラット、Smallが9%の順方向スプレッドで着地

5/13早朝(日本時間)発表のStandard指数入替えは、追加0銘柄、除外22銘柄であった。昨年10月末から今年4月末の直近半年間の指数リターンは、S&P500の-10.3%、Stoxx600の-5.3%に対して、Topixは-5.1%で3指数の中ではベストだったが、米ドルが対円で+13.9%、対ユーロで+9.6%と大幅なドル高となったことで米ドル建ではワーストになった。結果的に、MSCIグローバル指数に占める日本株比率はかなり低下し、追加銘柄はゼロになったと見られる。下図は、5/12引けからリバランス日の5/31引けまで、等ウェイトで追加銘柄(今回はゼロであったため、Topix指数で代替)をLongし、除外銘柄をShortした場合の累積%リターンの推移。

昨日と今日の2日間で除外銘柄のショートカバーが急速に進み、スプレッドは縮小して、ほぼ横ばいで着地した。

Small指数入替えは、追加10銘柄と除外55銘柄。下図は、5/12引けからリバランス日5/31引けまで、等ウェイトで前者をLong/後者をShortした場合の累積%リターンの推移。

最初から順方向へスプレッド拡大しつつ着地した。追加銘柄が+14%、除外銘柄が-5%でスプレッド+9%弱で着地。下2表は、銘柄リスト。Small指数をベンチマークとするパッシブファンドの規模及び正確な浮動株比率は不明だが、個人的想定で算出した推定インパクトをDTC(推定需要を直前25d平均出来高で除した値)として示した。低流動物や直近上場物は別として、概ね時価総額700億円超で追加、500億円未満で除外となっている。

 

 

 

 

 

                                                                                                                                         

本内容にある見積、予測、予想に関する情報が正しいとは限りません。また、本内容は特定の銘柄、取引を推奨するものではありません。取引に当たっては、ご自身のご判断でお願いします。売買で被られた損失に対し、著者は何らの責任も持ちません。

Weekly Market Summary: 2022/5/27

5/23-5/27: 米株式市場は、9月以降利上げペース緩和観測に加え、各種経済指標からインフレ鈍化の兆候が鮮明化し、センチメント改善から大幅高。主要決算発表一巡し、当面の市場最大の関心はインフレ動向に。

 

 

米株は、長期下落相場での短期上昇となり、S&P500とナスダックは8週連続安を免れた。対照的に、日本を含むアジア株はほぼ横這い。ボラティリティは、HVが高止まる中で、IVが急低下し、オプション買いの妙味が増加。とは言え、VIX先物は水準的にはまだ高い状態が続く。

米国債は小動き。FXは、実質金利のピークアウトに合わせて米ドルも軟化。利下げ効果なく、ルーブルの上昇止まらず。仮想通貨は、テラ崩壊の影響からイーサリアムが急落。コモディティは総じて小高い。

 

先週の住宅関連指標で見られ始めたインフレ鈍化傾向は、今週はより鮮明化。まず、新築住宅販売戸数は、住宅ローン金利の急上昇が効いて、大幅な下振れ。住居費はCPI構成ウェイトが高いため、明確なインフレ低下確認には必要不可欠である。来週5/31(火)発表のケース・シラー住宅価格指数も3月の古いデータであるが、注目される。

また、PCEデフレーターが1年半振りに前年比で低下したことも、インフレのピークアウトの兆候となり得るが、実質個人消費も堅調だったのはやや意外。先週発表の小売売上高が堅調さを示したのは、足元のインフレを念頭に置けば不思議でないが、インフレ調整後でも好調な訳は、実質所得が伸び悩む中で、貯蓄取り崩しが下支えしたことであった。実際、貯蓄率は急低下しており、消費持続力は早晩、限界に達すると見込まれる。

今週の株式市場にとっては、消費が堅調さを維持しつつ、インフレが鎮静化するという最良シナリオに沿った結果だったが、この先の消費は厳しいと見る。来週5/31(火)発表の消費者信頼感指数も注目。

来週の最大の注目は雇用統計である。中でも、平均時給に減速が確認できるかどうかが、下方硬直性の高い賃金に明確な下落が確認できるようになれば、インフレ鈍化の明確化にも大きく寄与するはずである。

インフレ鈍化が明確化するまで当局が利上げの手綱を緩めることはないし、株価も底値確認とはいかない。逆説的だが、株安に伴う逆資産効果はインフレ抑止に効果大となるはずである。特に、米国は家計資産に占める株・投信比率が高く、日本に比べて金額ベースでは約30倍の大きさである。既に、高値から20%以上下落して弱気相場入りしているナスダックが、本格的な戻りを見せることなく低迷が続くと、逆資産効果に伴うインフレ抑止も見込まれる。

足元の金融引き締めによる住宅関連の減速、食料品・エネルギー高による裁量的支出圧迫や貯蓄率急低下が示唆する消費息切れ見通し、株安による逆資産効果に、賃金成長の鈍化が加われば、需要側のインフレ圧力は相当低下すると思われる。株式市場も、こうした需要側のインフレ鈍化の兆候を囃しての短期上昇となっているが、中長期的には、供給側の問題である露宇紛争の終結と中国の厳格なゼロコロナ政策の緩和がないと、確実なインフレ収束とはならない。

FRBは7月までの2回のFOMC会合で各50bps、計100bpsの利上げを示唆しているが、足元の金利先物市場での利上げ織り込みは100bpsを切っている。株式市場も金融引き締めの緩和見通しを好感した買い姿勢を目先は持続するだろうが、インフレ放置を反省して引き締め姿勢に転じたばかりのFRBが拙速に緩和姿勢に転じる可能性は低いと見る。今後の供給側のインフレ圧力の低下が確認できてこその姿勢転換であろう。FRBの政策対応の硬軟度の予測精度が投資のパフォーマンスを大きく左右することが普遍的な真実であることに変わりはない。

 

 

 

 

 

                                                                                                                                       

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Weekly Market Summary: 2022/5/20

5/16-5/20: 米市場、景気減速を織り込む流れ。景気後退の回避には懐疑的な見方強まる。債券高&株安の逆業績相場の様相が鮮明化。

 

 

 

米株は、週間でダウが8週連続安、S&P500とナスダックが7週連続安で2001年以来最長。4月小売売上高(インフレ調整前)の上振れが好感され、週前半は強含みで推移したが、小売企業の失望決算がインフレの重しを浮き彫りにしたため、企業業績全体の悪化への連想が高まり、週後半は大きく崩れた。また、弱めの経済指標が相次ぎ、パウエル議長のインフレ退治最優先のタカ派強化発言もセンチメントの足枷に。S&P500は、ボラティリティ高まるオプション満期日を迎えた週末にザラ場で弱気相場入りも、引けにかけて急速に戻し、辛うじて弱気相場入りを回避。

対照的に、日本株は欧米に比べたバリュエーションの割安感やインフレ圧力の低さが選好され、週間ではやや上昇して終えた。ボラティリティも、S&P500 VIXが30前後で高止まりを示した一方、日経VIは25を割り込んで終えた。

また、米市場が大幅安で帰ってきた5/19(木)も日銀砲でそれなりに下げも吸収するなど、日本株はザラ場での切り返しが目立った週であった。

米国債は、長期金利低下主導でイールドカーブはブル・フラット化。10年債は、2.8%割れで3週間ぶりの低水準。BEIもパラレルに低下した結果、実質金利はほぼ変わらず。通貨は、米ドル高一服に対して、円とユーロは小幅高、資源高謳歌ルーブルは年初来高値水準。コモディティは、小麦がインドの輸出禁止を受けて一時ストップ高を見せるも往って来いだが、総じて高いものが目立った。

 

 

 




                                                                                                                                       

本内容にある過去データ及び将来の見積、予測、予想に関する情報が正しいとは限りません。また、本内容は特定の銘柄、取引を推奨するものではありません。取引に当たっては、ご自身のご判断でお願いします。売買で被られた損失に対し、著者は何らの責任も持ちません。

 

Weekly Market Summary: 2022/5/13

5/9-5/13: 週末のパウエル議長による「75bps利上げ検討せず」再表明で、S&P500の弱気相場入りは免れたが、景気後退の織り込みから株売り/債券買いが進展、今週発表のインフレ指標を見る限り、ピークアウト確認にはまだ時間を要する。

 

 

インフレ指標発表への警戒高く、週初から景気後退を織り込む弱株強債の動きが続いたが、週末のパウエル議長の「75bps利上げは検討せず」再表明から流れは反転した。週末の株上げで、ナスダックに続くS&P500の弱気相場入りは回避された。一方で、10年国債利回りは3%割れ水準に押し戻された。

不安定な値動きの割に、ボラティリティの動きは限定的で、VIXは30割れ、Skewは年初来の安値水準に低下し、テールリスクの高まりは見られない。

また、株式市場と債券市場の相対的楽観・悲観度を測るVIX指数/MOVE指数も、直近1年のレンジ真ん中付近にあり、両市場にとってバランスの取れた位置にある。

通貨は、米ドルの強さは変わらず。対資源国通貨も強く、対ユーロでは等価も視野に入る。仮想通貨は、ルナ担保のテラUSDの急落も重しとなり、全面大幅安に見舞われた。以前までのインフレヘッジ手段として最適な資産としての評価は雲散霧消し、今やリスクスプレッダーに転じてしまった。

コモディティは、インフレヘッジ需要の一巡感から、穀物やエネルギーを除けばドル高の影響もあって総じて弱い。

 

米CPIは、6月までは低下期待続き、7月からは上振れ警戒を示唆?

政策金利の上限や株価の下限は、いずれもインフレのピークアウトの兆し鮮明化のタイミングで確認できるはずである。先日発表の米4月CPIでは、前年比で低下が確認されたものの、予想程の低下ではなかった。また、前月比では、食品及びエネルギーの下落が効いて、総合CPIは大きく低下したが、コアCPIは帰属家賃や航空運賃の上昇から上振れる結果となった。この強弱混ざった内容を受けて、米株が大幅安で反応したのは、より明確な低下を期待していた市場の落胆と思われる。

インフレ高進の先導役が財からサービスに移る中、CPI構成の大きなウェイトを占める住居費(帰属家賃)の上昇に落ち着きが見られないため、個人的にはインフレのピークアウトはまだかなり先だと考えており、必然的に長期的な下落相場を基本線としている。しかし、せっかちな株式市場がピークアウト期待を高める結果、長期下落相場での一時的上昇の可能性が、昨年の米CPIの推移から見込まれる。

下図は、左が米CPIの前年比推移、右が前月比推移。インフレ高進ペースが一気に高まったのが昨年の4月から6月であり、その後の7月から9月までは減速傾向が見られたが、10月から再加速という経路を辿っている。従って、前年比ベースでは、6月CPIまでベース効果剥落によるインフレ低下期待を抱きやすい。しかし、前月比で見れば明らかなように、7月以降は大きな減速を見せたため、このタイミングではインフレの上振れ警戒を抱きやすくなる。CPIへの株式市場の思惑という観点に限れば、6月CPIが発表される7月上旬までは強含み、以降は7月CPIが発表される8月上旬にかけて弱含む想定に沿った展開が生まれても不思議はない。



日本株と米株、どっちが強い?

最近、米株と比べた日本株の相対的強さを指摘する記事が散見されるが、ミスリーディングな側面があるため留意したい。下左図は、年初=100としたTopixとS&P500の指数化チャート。確かに、topixの値持ちの良さが確認できるが、為替を考慮すると景色が一変する。下右図は、同様のドル建Topixと円建S&P500の指数化チャートだが、Topixの劣勢は免れない。

年初来で15%程下げている米株も、日本人目線では円安が10%程を相殺しているため、それ程悪くはない。一方、日本株投資を検討する外人目線では、いくらTopixが相対的に底堅いと言っても、金融政策スタンスの違いに起因する円安が見込まれる以上、積極的に買うかというとやや疑問。

日本人(円建)から見たTopixの相対的底堅さは、円安メリットやバリュー株のウェイトの高さで説明されるのであろうが、少なくとも、外人(ドル建)目線では円安はデメリットとなる。そのデメリットを補って余りある指数自体の上げが見込めれば問題ないが。また、円安で相対パフォーマンスが底堅くても、円安はドル建てで見た世界の株式時価総額に占める日本株の比率を低下させる。先日発表のMSCI半期銘柄入替では、スタンダード銘柄への採用はゼロで、除外が22であった。

日本株市場は、持株比率1/3を誇り、体感的に日々の売買占有率1/2を握る外人主導、加えて、地理的にアジア情勢に敏感な市場である。オーバーナイトで未消化の材料やアジア時間でのショックイベントに対しては、特にデリバティブの市場流動性豊富な日本市場が真っ先にヘッジ売りにされされる。そうしたリスクに過敏な市場という側面にも注意すべきである。

 

 




                                                                                                                                       

本内容にある過去データ及び将来の見積、予測、予想に関する情報が正しいとは限りません。また、本内容は特定の銘柄、取引を推奨するものではありません。取引に当たっては、ご自身のご判断でお願いします。売買で被られた損失に対し、著者は何らの責任も持ちません。